謎、そして初めての依頼
「ふざけたことを言うな、ゴミが。死ね」
予想通り、ルアがそんなミレーヌの教育に悪い言葉を吐くと同時に、変な男は地面から伸び出てきた骨の手によって引きずり込まれていった。
……うん。ミレーヌを抱きしめててよかったな。耳を塞ぐだけだったら、こんな怖い光景を見せてたかもしれない。
ナイス判断だ。俺。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ」
抱きしめることによってミレーヌの視線も塞いでいたことを自画自賛していると、受付嬢のそんな情けない声が聞こえてきた。
……今思ったら、これ、不味いんじゃないのか? そもそもの話、魔王としてのルアの噂がどこまで拡がっているかを知りたいな。
使う魔法だったりも知られてるのか、知られてないのかだったりさ。
今のルアの魔法のことがもしも魔王の噂として拡がっていたんだとしたら、この受付嬢の怯えている理由が変わってくるからな。
「ルア、さっきの男、出してやれ。まだ死んでないんだろ?」
「えー、あんなの、僕たちのためにも、殺した方がいいよ」
……やっぱりこいつ、危険だな。
ただ、旅に着いてきてもいいって条件に言うことを聞くってことが含まれてるんだ。
もう一度言えば大丈夫だな。
「いいから、出してやれ」
「……分かったよ」
ルアは大人しく……いや、渋々ではあるけど、俺の言葉に頷いて、さっきの変な男を出してくれた。……骸骨のアンデッドと一緒に。
「おい、そのアンデッドは帰せ」
「分かってるよ」
俺がそう言うと、ルアはまた頷いて、骸骨のアンデッドは怯えた様子の変な男を放り投げたかと思うと、出てきた地面に帰って行った。
そして、そこには怯えた変な男だけが残った。
……取り敢えず、もうミレーヌの耳は塞がなくても大丈夫かな。
「さて、それじゃあ、早速俺たちを冒険者にしてくれ」
「ぇ? ぁ、は、はい……」
? なんで俺まで怯えたような目で見られるんだ? そういう目はルアに向けるべきだろう。俺は何もしていない……どころか、男を助けた立場なんだぞ?
俺が内心でそんな困惑をしているうちにも、怯えた様子を見せながら、何か色々と作業をして、三人分のカードを渡してきた。
おかしいな。
聞いた話では、何か色々と魔道具を使って調べられるって話だったんだが、まぁ、別にいいか。手間が省けたんだ。気にする必要は無いな。
そこだけ不安要素だったし。
「どうも。……それじゃあ、早速依頼っていうのを受けさせてくれ」
「は、はい……あ、あの、最初はそちらのEランクからの依頼しか受けられませんから、そこのところはご注意下さい」
ランク……? よく分からんけど、最初はってことは、ランクっていうのを上げていくと、もっと金が稼げる依頼を受けられるってことでいいのか?
……未だに怯えている様子ではあるけど、聞くのが手っ取り早いか。
「は、はい、そ、そうです……」
内心で思っていたことを口に出して受付嬢に聞くと、すぐに頷き、肯定してくれた。
もう少し聞きたいこともあったんだけど、怯えられてるし、もういいや。
「だったら、これを受けるよ」
「は、はい、分かりました」
「えー、こんなの受けるの? すぐ終わっちゃうよ」
「すぐ終わるからいいんだろ。文句言ってないで、行くぞ」
受けたのはゴブリン討伐の依頼だ。
これなら早く終わるし、楽でいいっていうのに、なんでルアは不満げなんだよ。
……まぁいいや。ルアのことなんか無視して、依頼のためにゴブリンを討伐しに行こう。
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