冒険者、そして保護者
歩いている人達に色々聞いて、俺たちは冒険者ギルドという場所に歩いていた。
そこで冒険者になれるらしいからな。
「そういえば、ルアはどうするんだ?」
「え? 何が?」
「冒険者にお前もなるのか? って聞いてるんだよ」
別にどっちでもいいんだけど、適当な話題として、俺はそう聞いた。
「私は? 私はなれないの?」
「ミレーヌはならなくて大丈夫だよ」
「そうなの? 冒険者になった方がレヴィの為になるんじゃないの?」
「ミレーヌはそのままでいてくれた方が俺は嬉しいよ」
「ん〜! 私はどんなレヴィも好き〜」
「あー、そう言われると、俺もどんなミレーヌも好きだよ? でも、まだミレーヌは子供だからな。冒険者になるんだとしても、大人になってからな」
仮にミレーヌが冒険者になったとしても、俺とルアがいるんだし、大丈夫ではあるけど、やっぱりまだ子供だからな。
形だけだとしても、ちょっとな。
「むー、分かった〜」
「それで、結局ルアはどうするんだ?」
「僕もなってみようかな。レヴィと一緒がいいし」
「えっ、私もレヴィと一緒が良い!」
……ルアが余計な言い方するから、せっかく終わった話だったのに、ミレーヌが掘り返してきたじゃないかよ。
「み、ミレーヌには俺と家族っていう共通点があるだろ?」
「でも、他も一緒がいいよ。……どうしてもダメ? レヴィ」
「よし、ミレーヌも一緒に冒険者になるか」
「うんっ!」
さっきまでのはなんだったんだ? って話になるかもだけど、こんな可愛く自分の娘にお願いされて断れる親なんているわけないだろ。
ルアがなんかジト目を俺に向けてきている気もするけど、気にせずに歩いていると、教えてもらった冒険者ギルドという場所に着いた。
「ルア、手を話せ」
一度離したのに、また手を繋いでいるルアに俺はそう言った。
もう慣れてきたし、ルアと手を繋ぐことくらい別にいいんだけど、このまま中に入ったら完全に子供の保護者が迷い込んだみたいになるからな。
ミレーヌの保護者だって思われるのはいいんだけど、ルアの保護者だと思われるのは、お互いに嫌だろ。ルアは一応俺を落とそうとしてるわけだし。
「やだ、なんで?」
……もう何度目か分からないけど、こいつは本当に俺を落とす気があるのか? ……いや、単純に周りの目なんてどうでもいいのか。
俺なら、外堀を埋めようとするけどな。……まぁ、旅をしてるんだし、誰かと長く付き合うことなんてないだろうし、外堀なんて埋まらないだろうけど、ルアがそこまで考えて嫌だと言ってきてるとは思えないから、そういうことなんだろう。
「はぁ。分かったよ。ほら、入るぞ」
「うん」
「楽しみだね、レヴィ、ルア」
「そうだな、ミレーヌ」
「僕も楽しみだよ」
そんなやり取りをしながら、俺たちは冒険者ギルドという場所の中に入った。
んー、正直俺もどうでもいいけど、なんか、場違い感がすごいな。
俺たちは誰一人として武器すら持ってないし。ミレーヌは当たり前だけど。
「あれが受付嬢ってやつか」
「多分、そうじゃない?」
違ったとしても、また聞けばいいだけだし、行くか。
「冒険者になりたいんだが、どうしたらいい?」
そう思って、受付嬢? らしき人物の元まで歩いて行き、そう聞いた。
「えっ、あっ、はい。お兄さんお一人、ですか?」
「いや、全員だ」
「ぜ、全員、ですか。わ、分かりました」
この対応を見るに、この人が受付嬢ってやつで合ってたっぽいな。
「おいおい、あんただけが冒険者になるのならともかく、他のガキ二人はねぇだろ! なぁ、ふざけてんのか!?」
受付嬢が机の下から紙を取り出すのを見ていると、変な男が急に大声でそんなことを言ってきた。
おい、家のミレーヌが怖がりでもしたらどうするつもりだよ。
何故か全然怖がってる様子が見えないから、取り敢えずは別にいいけどさ。
「は? 待って、ガキ二人? 一人じゃなくて?」
そう思っていると、ルアが呟くようにそんなことを口にしていた。
俺は知っているからともかく、普通に初対面だったら、ガキ二人だと思うとおもうぞ? 見た目もそうなんだけど、俺と手を繋いで中に入ってきたし。
「ぁ? クソガキが、誰に向かって口聞いてんだ? おい! てめぇはこいつらの保護者だろ! ちゃんと教育しとけよな! 聞いてんのか!?」
そりゃ聞いてるけど。
と言うか、予想通りというか、やっぱり二人の保護者に見えるんだな。俺。
「……違う。レヴィは、僕の恋人」
それも違うぞ?
内心でルアの言葉を否定しつつも、ルアがキレてることを悟った俺は、ミレーヌを下ろして、抱きしめながら耳を塞いだ。
絶対ろくでもない言葉を吐くだろうからな。
「ふざけたことを言うな、ゴミが。死ね」
予想通り、ルアがそんなミレーヌの教育に悪い言葉を吐くと同時に、変な男は地面から伸び出てきた骨の手によって引きずり込まれていった。
……うん。ミレーヌを抱きしめててよかったな。耳を塞ぐだけだったら、こんな怖い光景を見せてたかもしれない。
ナイス判断だ。俺。
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