金を稼ぐ方法、そして魔王

「ルア、何か手っ取り早く金を稼ぐ方法ってないか?」


「え? 僕、いっぱいお金持ってるし、大丈夫だよ?」


「……お前、金を出してもらう度にさっきみたいにご褒美をくれ、みたいなことを言うつもりだろ」


「えっ? そ、そんなこと全然無いよ? ……ま、まぁ、レヴィがどうしてもっていうのなら、ご褒美を貰ってもいいけど」


 貰ってもいいけどって、なんでそんな上から……いや、そりゃ上からか。

 もしもこれからの生活、全部ルアに金を出してもらうってなったら、どう考えても俺の方が立場が弱くなるからな。

 ……まぁ、そんな未来は訪れないけど。


「馬鹿なこと言ってないで、何か知っているのなら、さっさと教えてくれ」


「レヴィ、お金ってそんなに必要なの?」


「ん? あぁ、そうだよ、ミレーヌ」


「私も、レヴィの為にお金を稼げる?」


 ミレーヌが金を稼ぐ……? 

 いやいやいや、ミレーヌはまだ子供だぞ。

 そういうのは、親である俺に任せてくれてたらいいんだよ。


「ミレーヌは大丈夫だよ。せめて、もう少し大人になったらな」


「えー、レヴィの為に私も何かしたいのに……」


 ミレーヌは拗ねたようにそう言ってきた。

 ……不味い。可愛いけど、また拗ねられるのはちょっとまずい。

 あの時はたまたま、ミレーヌが拗ねた件が有耶無耶になっただけで、今は不味い。


「大丈夫だよ。ミレーヌは居てくれるだけで俺の癒しだからな」


「……本当?」


「あぁ、本当だよ」


 俺の言葉を聞いたミレーヌは、さっきまでの拗ねそうな様子がまるで全部嘘だったかのように、笑顔になってくれた。

 

「えへへ」


「ねぇねぇ、僕は?」


「ん? あぁ、ルアは重いよ」


 色んな意味で。……いや、体重はどう見ても軽そうだけど。


「そ、それ、どういう意味?」


「……1000年感も一途に思い続けてくれるいい女って意味だよ」


 そう言うと、ルアは珍しく照れたように顔を耳の先まで真っ赤にした。

 前半はともかく、後半は別に本気で思っている訳では無い。別に悪いやつと言う気は……無い、こともないけど、ルアは色々と危なっかしいからな。本当に、危なっかしいんだ。

 ……ただ、今のこの耳の先まで真っ赤な顔だけは可愛いと本気で思うよ。……別に、恋愛対象としてそう思った訳では無いけど。


「ルア、そんなことより、俺でもできる金の稼ぎ方を教えてくれ」


「う、うん。もちろんいいよ。……僕もあんまり知らないんだけど、レヴィは強いし、冒険者とかがいいんじゃない?」


 ルアは未だに顔を赤くしながら、そう言ってきた。


「……冒険者?」


 なんだ? それ。

 冒険でもするのか? ……いや、どこを? ていうか、俺はミレーヌに世界を知って貰うために旅をしたいのであって冒険がしたい訳じゃないぞ。

 ……金を稼ぐんだから、好きなことができるとは思ってないけど、冒険者は無いな。


「冒険者っていうのは、強い魔物? とかを倒して、その素材をギルドってところに持っていったりして、お金を貰う仕事なんだって」


「ん? 冒険をするんじゃないのか?」


「違うみたいだけど、僕もよく分かんないよ」


「そうなのか。……と言うか、よく分かんないのなら、なんで冒険者なんてもの、知ってたんだ? あくまで俺の予想でしかないけど、俺と再会するまで、人間と関わったりしてこなかったろ」


 街を壊した時とかは別にして、仲良くおしゃべりなんてことはしてこなかったはずだ。

 

「500年くらい前、だったかな。冒険者を名乗る人間が魔王を討伐して名誉を得るんだ! みたいなことを言って、僕を殺しに来てたから、知ったんだよ」


「なるほど……って、は!? る、ルア? お前、今なんて言った?」


「え? えっと、僕を殺しに来てたから? あっ、も、もしかして、心配してくれてる? 大丈夫だよ。一人残らず殺したし、僕の体には指一本触れさせてないからね」


 ……ミレーヌが居るんだ。殺した、なんて言葉を言うなよ、とは思うけど、それは一旦置いておこう。


「そうじゃない。その前だよ!」


「魔王を討伐して名誉を得る?」


「それだよ! 魔王ってなんだよ、お前」


「なんか、いっぱい壊しすぎて、いつからかは分かんないけど、そう呼ばれるようになってたよ?」


 こいつはなんでこんな軽いんだ? 魔王だぞ? 世界の敵だぞ? ……今からでも、やっぱりこいつは置いていこうかな。


「レヴィ? どうしたの? 魔王って、何かすごいの?」


 俺の腕の中にいるミレーヌがそう聞いてきた。

 ……あぁ、そうだ。ルアのことを気に入ってしまっているミレーヌが居るんだ。置いていくなんて、出来るわけないか。

 

「ある意味、凄いかな。……ただ、あんまり人前ではこのことを言わないようにな」


「? よく分かんないけど、分かった!」


「よしよし、偉いぞ、ミレーヌ」


「うんっ!」


 ルアが魔王だろうと、俺にとってはどうでもいい事だしな。

 そうして、改めてルアの方向に視線を向けると、何かをしてほしそうに俺を見上げるルアと目が合った。

 ……まさか、教えてくれた礼として、こいつも撫でて欲しいのか?

 ……まぁ、いいか。それくらいなら。


「ありがとな、ルア」


「う、うん。レヴィの為だから、全然大丈夫だよ」


 …………なんで、俺はここまでこいつに好かれてるんだろうな。

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