街、そして通行料
あれから、ミレーヌが朝食を食べ終わって、渋々ではあるけど、ルアに毛布を返してもらってから、俺たちはまた街に向かって歩き出していた。
もちろん、ミレーヌは俺の腕の中だ。
……ルアとも、手を繋がされている。
まぁ、野宿をする前と同じ完全に二人の子供の保護者スタイルだ。
「レヴィ! あれが街? 最初に行ったところとは、全然違うね!」
「まぁ、最初に行ったところはもう崩壊してたからな」
誰かさんに壊されてな。
……今更なんだけど、ルアと一緒に行動するのって本当に大丈夫なのか?
ルアの思考が危なくて不安定っていうのは置いておいて、街を何個も壊してるんだよな? 本当に今更なんだけど、ルアって人類の敵、ってやつじゃないのか?
いや、まぁ大丈夫か。
いくらルアでも、人にバレるようにそんなことはしてないだろう。
「レヴィ! 早く行こ?」
「ん? あぁ、そうだな」
そう思いつつも、ルアにそのことに関して質問をしようと思ってたんだけど、ミレーヌにそう急かされた俺は、直ぐに頷いて歩くスピードを上げた。
もちろん……では無いかもだけど、ルアの歩幅でも着いてこれるような速度で、だけど。
一応手を繋いでいる……繋がされてるし、引きずるような形になるのはやばいからな。
「ま、待て。……お前たちは、なんだ?」
そうして、街のそばまで来たところで、門兵に困惑した様子でそう言われた。
「ただの旅人だ。それよりも、さっさと通してくれ」
「あ、あぁ……通行料は銅貨二枚だ」
「これでいいか?」
ミレーヌとルアの優先順位だと、圧倒的にミレーヌが優先だから、ルアと繋いでいる手を離して、俺は門兵に銅貨二枚を差し出した。
すると、ただでさえ俺たちに困惑していた門兵は更に困惑した表情をして、言ってきた。
「えっと、なんだ? これは」
「なんだって、銅貨だろ」
「……いつの時代のものかは分からないが、この銅貨は使えないぞ」
は? 冗談だろう? たかが1000年で硬貨が変わったのか? ……だったら俺、街に入れないじゃないか。
「これなら大丈夫?」
もう後でこっそり街に入ろうかと内心で企んでいると、隣にいたルアが門兵に銅貨を渡してくれていた。
「え? あ、あぁ、大丈夫、だ。……通ってもいいぞ……?」
なんで疑問形なんだよ。と思いつつも、俺たちは街の中に入った。
「あっ! ち、ちょっと待て! あの子……いや、あいつは……」
その瞬間、さっきの門兵からそんな声が聞こえてきたけど、俺は無視してそのまま街の中を進んで行った。
「ねぇ、レヴィ? 僕に何か言うことがあるんじゃないかなぁ?」
そうして、興味津々にキョロキョロと周りを見ているミレーヌを微笑ましく思いながら見ていると、ルアが俺の腕を抱きしめてきながら、満面の笑みでそう言ってきた。
「…………助かったよ、ルア」
「僕のこと、連れてきて良かったでしょ? 何か、ご褒美が欲しいなぁ」
……実際、ルアのおかげで街に入れたんだし、感謝はしてるんだけど、腹が立つな。
「はぁ。望みは?」
「キス……じゃなくて、ギュッと抱きしめて欲しい、かな」
……キスのままだったら、絶対断ってたけど、まぁ、それくらいなら、別にいいかな。
「分かった。ただ、また後でな」
「う、うん」
「レヴィ、私は?」
「ミレーヌもまた後でな」
「うんっ!」
さて、それで俺はどうやって金を稼ごうな。
ルアがまだ持ってるかもだけど、またルアに頼ったら、変な頼み事をされそうだし、金を稼がないわけにはいかない。
なんかあるかな。手っ取り早い仕事。
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