わがまま、そして仕方なく
「取り敢えず、寝る場所を決めるか」
「寝る場所?」
「まぁ、場所を決めるって言っても簡単だ。ルアがあっち、それで俺たちがこっち。ほら、簡単だろ?」
「うん! レヴィと一緒なら、私はいいよ!」
テントなんかは持ってきてないけど、毛布くらいは持ってきてるし、ミレーヌをそれに包んで、俺がそのミレーヌを抱きしめる形にすれば、固い地面でも眠れる程度にはマシになるはずだ。
「待って、レヴィ、おかしいよね?」
「ん? あぁ、安心しろ。俺も鬼じゃない。ほら、これがルアの毛布だ」
ルアは毛布なんて持ってないだろうからな。
「レヴィの匂いがする……あ、ありがとう。……ってそうじゃなくて! 僕は!? なんで僕だけ一人なの!? 僕もレヴィと一緒がいいよ!」
嫌に決まってるだろ。
確かに、黙ってどこかに行ったことは悪いと思……ってるぞ? うん。思ってる思ってる。ルアが八割くらい悪いと思ってるけど、残りの二割は俺も悪いと思ってるからな?
ただ、その件は一緒に来ることを許したことと、レヴィ呼びを許してやっているんだから、チャラだろ。
「み、ミレーヌ、君なら、分かってくれるよね? ほら、想像してみて? レヴィに一人で寝ろだなんていきなり言われたら嫌でしょ? ね?」
そんなことを思っていると、俺に話しても絶対に一緒に寝ることを許して貰えないと思ったのか、ルアはミレーヌを味方につけようとそんなことを話していた。
……無理に決まってるだろ。さっきからルアはミレーヌに大人の癖にみっともない嫉妬をして、変な意地悪をしてたんだぞ? そんな相手にミレーヌが同情なんてするわけないだろ。
「……そんなの、やだ。レヴィと一緒に寝たい」
「でしょ? だったら、お願い。レヴィを説得してよ。僕じゃダメでも、ミレーヌなら説得できると思うんだよ」
「は? おい、み、ミレーヌ? ルアにさっき言われたことを忘れたのか?」
「それは覚えてるけど、それはルアもレヴィが好き、だからなんでしょ?」
あれ? なんか、この流れ、不味くないか? と言うか、ルア、お前はもう少し恥じらいを持った方がいいぞ? 今、ミレーヌの方がお前の100倍は大人の対応をしようとしてるからな?
「レヴィ、ルアとも一緒に寝てあげよ? 一人は寂しいよ」
……ミレーヌの成長を喜ぶべきか、ルアと一緒に眠ることになってしまったことを悔やむべきか。
親が子供の成長を喜ばないわけにはいかないよな。
「よしよし、ミレーヌ、偉いな。本当に、ミレーヌは成長してるよ」
「……成長はしたくない。小さいままがいいよ」
そんなミレーヌの言葉に、俺はミレーヌの頭を撫でながら、思わず苦笑いになってしまった。
ほんと、俺の娘は可愛いな。
「はいはい、俺はミレーヌが成長してくれた方が嬉しいけどな」
「……うー」
まぁ、今はそれでも構わないさ。
「……はぁ。ルア」
「れ、レヴィ……怒った?」
「別に怒ってはねぇよ。……あれだ。ミレーヌに免じて、一緒に眠ることだけなら許してやるよ」
「う、うん! ありがとう、レヴィ」
「……寝るだけだからな? ミレーヌもいるんだ。本当に変なことをしたら、許さないからな?」
「わ、分かってるよ!」
本当だろうな。
……いや、今は信じるか。疑っても仕方ないし。
そうして、俺とルアは食事なんてしなくても問題は無いから、ミレーヌにだけ食事をさせて、眠る時間になった。
「ミレーヌ、寒くないか?」
「うん。レヴィは大丈夫?」
「あぁ、俺は平気だ。ルアも一緒に寝ることになって、ルアに渡した毛布も使えるしな」
「良かった」
「ほら、ルアもさっさと来い」
何故か不貞腐れているルアに向かって、俺はそう言った。
いや、何故か、じゃないな。理由なんて分かってる。ただ、それは自業自得だ。
「なんでミレーヌを挟む形なの。僕がレヴィの背中側でもいいからさ。今からでも、変えない?」
「お前、ミレーヌが寝静まったら、俺に変なことするつもりだろ」
「へっ、え、そ、そんなわけないじゃん」
「……ミレーヌを起こさないようにと俺が声を出せないのをいいことに、色々と俺の体をまさぐるつもりだったろ」
「……んぅ。レヴィ、変なことって何? まさぐるって何?」
「なんでもないよ。ほら、もう眠いんだろ? ゆっくり眠っていいからな。おやすみ、ミレーヌ」
「……うん。おやすみ、レヴィ」
ルアも夜目が利くからか、ミレーヌに優しくそう言って目を閉じると、ルアは渋々と言った感じにミレーヌを挟むようにして、毛布の中に入ってきた。
そしてそのまま、ミレーヌが痛くないように調整しながらも、俺に抱きつこうとしてきた。
……まぁ、それくらいならいいか。ミレーヌも温かいだろうし。
そう思って、俺の方からも、ミレーヌを抱きしめるついでに、ルアを抱きしめた。
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