年齢、そして成長

「……レヴィ〜、抱っこ〜」


 ルアに壊していない街を聞いて、しばらく歩いたところで、ミレーヌが甘えるような声でそんなことを言ってきた。


「はいはい、ほら、おいで、ミレーヌ」


「うん!」


 いつもみたいに、俺に飛び込んできたミレーヌの体を受け止めて、俺はミレーヌのことを抱っこした。


「……レヴィ、僕も疲れた」


「あ? あぁ、それで?」


「……僕も抱っこ」


 コイツは頭がおかしくなったのか? ……いや、頭がおかしいのは元からか。

 

「するわけないだろ」


「……なんで? その子はいいのに、なんで私はダメなの?」


「見た目はともかく、お前は大人でミレーヌはまだ子供だからだ」


 俺の完璧な正論に何も言い返せないのか、ルアは不満そうな顔をしながらも、何も言い返してこなかった。

 

「何やってる」


 そう思っていると、突然、ルアが手を繋いできたから、そう言った。

 ミレーヌは片手で抱っこ出来てるし、もう片方の手が空いていたとはいえ、別にルアと手を繋ぐために空けておいた訳じゃないからな?


「こ、これくらいなら、別にいいでしょ」


「……はぁ。まぁいい。これでルアが満足したのなら、さっさと行くぞ」


「う、うん」


 顔を赤らめながら、ルアは頷いてきた。

 ……うん。正直、ミレーヌ程では無いけど、ルアも可愛いとは思うぞ? でも、単純に頭がおかしいし、それを抜きにしても、今の状況って傍から見たら完全に俺、二人の子供の保護者だからな?

 このこと、ルアは理解してんのかな。

 考えるまでもない。理解してないんだろうな。

 俺にとって問題のあることじゃないから、何も言わないけど。


「そういえばだけど、その子、ミレーヌって歳は何歳なの?」


「私は14歳だよ! この前、レヴィに誕生日を祝ってもらったんだ」


「……ちっちゃくない?」


 それは歳の割に背丈がが小さいって話しか? ……もしそうなんだとしたら、完全なブーメラン発言だぞ。

 どう考えてもルアの方が歳を取ってて、ちっちゃいんだから。


「ミレーヌは色々あって俺の娘になったんだよ。小さいことくらいどうでもいいだろ」


「レヴィ、私、小さいの?」


 ほら、ルアが変なことを言うから、ミレーヌが気にし始めてるじゃないか。


「まだ成長中なだけだよ。2年前よりは大きくなっただろ?」


「……うん」


「だったら、ミレーヌはまだ成長していくから、安心しろ」


「うんっ! ありがとね! レヴィ」


「……成長したらもうレヴィに抱っこなんてして貰えないけどね。その点、僕だったら、もう成長なんてしないし、一生抱っこだってしてもらえるけど」


 ルアは抱っこなんてしねぇよ。

 と言うか、本当にそれでいいのか? もっと違うところで張り合えよ。抱っこなんて子供にしかしないからな?


「ぇ、レヴィ、抱っこしてくれなくなるの?」


「……ミレーヌの体が成長したら、出来なくなるかもな」


 ここで下手な嘘をついて誤魔化しても仕方ないから、俺は少し言いにかかったけど、正直にそう言った。

 体が成長したら、物理的に抱っこなんて出来なくなってしまうからな。言っておかないと。


「……やだ。だったら私、成長なんてしたくない。ずっと小さいままでいいもん」


「ルア、お前のせいだからな」


「僕は本当のことを言っただけだよ?」


「……はぁ、まぁいい」


 今はこうだけど、ミレーヌも成長したら、分かってくれるだろう。


 それから少し歩いたところで、辺りが暗くなってきたのを確認して、俺たちは野宿を始めた。

 


 

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