仕方なく、そして諦め
「ほ、ホラ、ヨシヨシ……これでいいか? ミレーヌ」
ルアの髪の毛に少し触れるだけ触れて、俺は後ろを振り返りながらミレーヌにそう聞いた。
すると、明らかに怒っているような顔のミレーヌと目が合った。
……ルアが魔力でミレーヌを怯えさせた件で流れていたけど、さっきまでミレーヌは拗ねてたんだよな。……その上で、怒らせるのはまずい。
俺は強いけど、娘には勝てない、ということを少し前に知ったばかりなんだよ。
だから、怒らせるのはまずい。
……え? マジで俺、今からルアの頭を撫でるの? さっきも思ったけど、こいつ、とんでもなく危ないやつだぞ? 実際、街を一つ滅ぼしてるわけだし、絶対ほっといた方がいいと思うんだけど、ダメですかね? ミレーヌさん。
「……分かったよ。撫でたらいいんだろ」
諦めたようにそう呟きながら、俺はもう一度ルアに近づいた。
そして、なるべく距離を取りながら、いつもミレーヌにしているように頭を撫でてやった。
……正直、これで拒絶してくるならしてくるで俺は別に全然いいんだけどな。
「……レヴィアタン」
「なんだよ。……一応言っておくが、別に好きでこうしてる訳じゃないからな」
「……僕、君と一緒に居たい。……1000年間、ずっと探して、見つからなくて、絶望して、壊して、疲れた。……もう、一人は嫌だよ」
……俺も人の事なんて言えないけど、ルアも本当に長寿なのかを疑いたい思考をしてるよな。
……俺があの時、村の住人に会おうと思ったのも人肌が寂しかった、なんて理由だし、ルアの気持ちが分からないわけじゃない。
「……悪かったよ、ルア。……はぁ。分かった。ルアが俺と一緒に来たいのなら、もう好きにしてくれ。ただ、俺の言うことはちゃんと聞いてもらうからな」
そう思ったからこそ、後ろにミレーヌが居るという都合上俺はルアの頭を撫でながら、そう言った。
どれだけ気持ちが理解できようと、ルアが危険な存在だってことには変わりないし、これだけは譲れない。
「……うん。一緒に、行く。レヴィの言うこと、ちゃんと聞くから、一緒に行く」
「おい、呼び方が……いや、まぁいいか」
本来だったら絶対にミレーヌ以外にそんな呼び方許さなかったけど、1000年間ルアを一人にしてしまったことも事実だし、それくらいいいか、と思って、俺はそのままルアの頭を撫で続けた。
「特別だからな」
「特別……うん、分かった。ありがとう、レヴィ。大好き」
「……俺は別に好きじゃない」
「大丈夫。いつか絶対僕を好きにさせるから」
「……」
そんなことを言われたら、反応に困るだろ。
長寿な奴ってのは基本的には誰かとそういう仲になりたい、っていう願望も薄いんだよ。
その例に習って、俺もそういう願望は薄い。
だからこそ、相当な何かがないと俺はルアを好きになったりはしないだろう。
ただ、それはルアも理解しているみたいだし、その上で覚悟を決めてそんなことを言ってきてるみたいだし、俺が口を挟むような事じゃないな。
「……もうちょっと」
そんなことを内心で思いながらも、そろそろミレーヌも納得してくれている頃だろうと思った俺は、頭を撫でるのをやめて、ルアから離れようとした。
すると、俺が離れないように俺に抱きついてきながら、ルアは小さく、そう言ってきた。
……お前、もう泣いてないだろ。
「……はぁ。本当にちょっとだぞ」
ルアは本当に俺を落とす気があるのか? 正直、ちょっと……いや、かなり不安定で危ない子供を相手にしている気分だぞ。
……まぁ、少し前の俺ならともかく、ミレーヌの親になった今の俺からしたら、悪い気分では無いけどさ。
そう思いながら、俺はルアの頭を撫で続けた。
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