第10話 第二回国際会議
同日12時頃 バーチャル国際会議会場
会議場では、お昼時というのもあり昼食を食べながら現在の状況を確認していた。
会議室には次々人が集まりそれぞれ自分の国のシェフの作った料理を食べていた。
今回の食事はフランス料理でメニューも宗教上の理由がない限りどの国も統一されている。
その理由は、お互いの国に関心を持つためである。
昔は、その国に集まり会議をして一緒に食事をしていた。しかし、バーチャル会議が主流になり実際その国に集まることもその国の文化に触れることも少なくなった現在、それぞれの国に対しての関心が弱まってしまうかもしれないという理由で、会議室のデザインや昼食などの料理を主催国由来の物にするというルールになっている。
今回の騒動が無かった場合、次回主催の国だったのがフランスだったので会議室のデザインや昼食がフランス料理に統一されていたのだ。
会議室にある程度集まると司会者が会議の開催を宣言した。
「それでは、ただいまから緊急会議を開きます。
まず現在の状況をパプアニューギニア代表 アラン・ショーン に説明して頂きます。
「えー、今回皆さんに集まってもらったのは、パプアニューギニア島の北で海から3Kmほどの村から本日現地時間で10時42分に連絡が入りました。
内容は、「村中の人や動物が血を出して倒れている助けてくれ」といった内容でした。
それからすぐ、探索用PN(ペッパー・ノーマル)を送り込み周知の警備、村人の救出、村の調査を始めました。
そこで分かったのは、村中の全ての生き物が全滅したということと、サンプルとして持ち帰った服や骨、土や水などの中にある生物がいたということです。
この生物については、海域調査チーム代表「ジャック・ジョンソン」さんにして頂きます。」
そう言うと、前回と同様5人の白衣の研究者が出て来て、真ん中に座っていたジャックが話出した。
「皆さん、いまから画像や動画を出しますが、かなり恐ろしい物が多くでますので見たくない方は、お手元のボタンで画面を消すか、モザイクのかかった物に変えてください。」
バーチャル会議室の内容はそれぞれの国のバーチャル室に映し出されている。
例えるなら、別々の家でそれぞれが同じチャンネルのテレビを見ているようなもの、見たくない場合は、テレビのチャンネルを変えたり消したりするのと同じことが出来る。
ジャックは、3秒ほど待ち話を始めた。
「皆さん準備はできましたね。それでは、始めます。
まず、パプアニューギニア島での調査の映像を見て頂きます。」
そう言うと、動画が流され、ジャックは話始めた。
「村では服らしき布に血が付いていたり骨があっちこっちに散らばってます。
今回我々が村から持ち帰ったサンプルから見つけたのがこの、新種の生物でした。」
そう言ってジャックが出した画像は、大きさ0.05㎜程の生き物だった。
体は鱗のような物で覆われて、足は2本あり、よく見ると足の指は3本あった。
腕は、2本あり指が2本付いていて、口には鋭い歯のような物が並んでいた。
目は2個ありそれぞれ顔の側面に1つずつ付いていた。
そして、背中にはツノのような物が2本生えていた。
会場はザワめきジャックに対しての質問は、後をたたなかった。
「これはなんだ?」
「わかりません」
「あの背中のツノは?」
「おそらく羽にならなかった物です。よく見ると羽毛のような物を持つ個体もいましたが構造上、飛べないと判断しています。」
「いつ、何処で現れた?」
「おそらく、今日より前に、なんらかの方法で産まれ増えたとしか。」
「いつ分かるんだ!これは、前回の海の生物とは違うのか?」
「現在も私の研究所をはじめ各国の研究員が解析を進めています。そして現在わかっている限りでは、今回の生物と前回の生物は、生物学的に見ても全くの別物です。」
「何を言ってるんだ!どう見てもあの海での現象と村の現象は、全く同じではないか!
なら犯人も同じだろう。」
「いいえ、全く違います!
形も大きさも、体の構造も違います。まじ、あの二つが同じだとしたらおかしな所が沢山あります。
まず海で発見された生物は、体の外殻がしっかりしていなく、陸に上がれば体内の水分がすぐ蒸発して死んでしまいます。
しかし、陸で見つけた生物は外殻もしっかりしていて、ある程度の強度があると思われまた、体の構造もとても複雑です。
海で見つけたのとは、別の第2の生命体であると我々は考えます。」
ジャックへの質問が後を経たない状況を見て、司会者が急に割り込んできた。
「皆さんいま、するべきことは、生物の正体探しではありません!人類の存亡がかかってるんです。あの島でのことがいつ、この世界のどこで起きるかわかりません。
まずは、ジャックさんから生物の生態をできるだけ簡単に、そして正確に伝えてください。
いいですか?この会議は、皆さんの一番大切な人を守るための会議です。気を引き締めて下さい!」
その言葉が会場を本来進むべき方向へともどした。
ジャックは、気を取り直し生物の説明を続けた。
「とりあえず、いま現在分かっている限りでは、この生物は生き物全てを食い尽くすまで食べることをやめません。
実験では、肉や魚や野菜、そして木などの植物、あの村にあった物全てを与えてみたところ、その全てに食べた痕跡がありました。
繁殖方法などはまだわかっていません。弱点や駆除の方法は現在調査中です。
あと、この生物の今後の広がり方の予想をAIが出したので話します。
現在は夏ですので、パプアニューギニアから、モンスーンに乗りアジア地方やアフリカ地方へ飛ぶ可能性が高いという結果でした。
もし、あの生き物が風に乗れば全世界に広がるのに5日もかからないでしょう。現在報告できるのはここまでです。」
ジャックの報告は、会場の焦りを煽るだけだった。
謎の生物が増え、さらにその生物の駆除の方法もわからないのに、後5日もせず世界中に拡散してしまうという現実だけ突きつけられた。
「それだけか?」
「はい、以上です。また、新しい情報が入り次第すぐ知らせます。」
会場全体は呆然としていた。現実があまりに衝撃的すぎた。この現実を受け入れるには時間が必要だった。
しかし、時間は無い。
現にいまも、パプアニューギニアに居る国民をどう逃せばいいかで頭が痛いのに、後5日でそれが全世界に広がる。
あの光景が世界中は広がってしまう。なんとかしなければ人類は絶滅してしまう。その焦りは国によって差はあったが時間がその差を埋めていった。
その焦りはやがてパニックに変わり、会場中に広がった。
何かないのか。助かるには?助かるには?何をすれば良い?何が出来る?時間がない。方法が分からない。どうすれば良い?
そんな空気の中声を上げたのは、アメリカ大統領「ジョージ・マイケル」だった。
「皆んな大丈夫だなんとかなる!きっと何か方法がある。人類の全てがいまここに集まっているんだ!
もし、ここの全員が本気で協力出来たとしたら?
いま、我が国家は自国の力だけで宇宙旅行に行こうとしている。なら、全世界が集まれば何処まで行けると思う?
我々の底力を見せてやろうではないか!
全人類の知恵とAIぎあれば出来ないことなぞ無いのだ!
さぁやってやろうではないか人類達よ、家族や愛すべき人のために!我々の地球を取り戻すぞ!!」
ジョージの演説を聞いて会場の空気が変わった。
「あーそうだ!確かに出来ない事はない!」
「やってやろう!」
「ここ(地球)は俺達の物だ!」
ジョージの言葉で会場は、やる気と希望を取り戻した。これがジョージの力、この力でアメリカの大統領になった。
司会者はこの流れを逃すまいと司会を始めた。
「それではまず、助かる方法を考えましょう。当たり前ですが、あの生物と接触しなければ喰われません。
なので、外気などから遮断された場所でいますぐ利用できそうな施設や物や方法を探しましょう。」
司会者の問いかけに皆んなが考えている時、ジャックのもとに助手が来て耳元で話しかけた。
「ジャックさん、大変です。すぐ研究室は来てください。凄い事がわかったんです。」
「しかし、私はここで質問に答えないと。」
「大丈夫です。司会者には話をしています。あなたの代わりは私がしますので、早く行って下さい!!」
「わかった。頼んだぞ。」
さっきジョージが演説している最中に、司会者に話をしておいた助手と代わりジャックはバーチャル室から出て、1階の研究室へもどった。
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