第6話 有真 和也 (ありま かずや)

有真 和也 この話の主人公である。

彼は、大阪の大学の近くのマンションに住んでいる。

彼には、同居人の「有真 愛」(ありま あい)という妻がいて2人は大阪の大学で研究員をやっていた。


朝、和也がテレビをつけるとどのチャンネルも彗星の話でもちきりで、研究者や愛好家が出演して昨日の出来事やどんな彗星だったかを熱く語っていた。


「愛これ凄いぞ!どのチャンネルも昨日の彗星の事でもちきりだ!」


和也がソファに座ってテレビを見ていると、愛が少し不機嫌そうに和也に言った。


「そうね、でもそんな事より準備は出来たの?」


「あぁ、もう出来てるよ、もういいのか?」


「私はもう行けるよ?メモリーパソコンは持った?」


「持ってる最近のは小さくていいねぇー」


「でも、小さすぎて無くしそうでこまるけどね」


そんな話をしながら和也は、ソファから立ち上がると「そろそろ、行ってくる」と机の上の機械(いまで言うアレクサ)に向かって言った。

すると、「わかりました。戸締りをはじめます。」と言いテレビを消したり、窓やカーテンを締め始めた。


2人は、荷物を持って玄関に向かい「行ってきます」と言ってマンションの部屋を出た。

中から、「行ってらっしゃいませ」と聞こえ鍵が閉まった。


さっき2人が言っていた、メモリーパソコンとはいまで言う「USBメモリ」のようなモノで使い方もほとんど一緒である。違うのは、本体の役割がほとんどなくなった事でる。


いままでは、本体のスペックで動いていてUSBメモリはデータを持ち歩くだけの物だった。しかし、いまはUSBの中にソフトもデータもマザーボードも入っているのであとは、モニターとキーボードがあればパソコンと変わらないのである。

ゲームでいうカセットやソフトがこのメモリーパソコンである。

自分のゲーム機本体は別の人が使っていても友達のゲーム機を借りればどこでもゲームができるのと同じでこのメモリーパソコンが出来てからは、パソコンの本体を持ち歩く人は減っていった。

そして、大学や会社のオフィスにはモニターとキーボードだけが並ぶようになりノートパソコンなどを持ち運ばなくても何処でも自分のパソコンを使えるようになっている。


少し高額だが、10㎤ほどの機械と専用ゴーグルと専用手袋を使い、フォログラム型の自分の周り360度全ての空間を使ったパソコンもあり「まるで映画だ!」と話題を集めていた。


そんなメモリーパソコンを持って家を出た2人の今日の予定は、病院への通院と職場である大学の特別研究室に行くことだった。

2人が外へ出るとそこには、大都会の大阪が広がっていた。


空は天をつかんばかりのビルそして、半円のリニア用のレールが地上5mほどのところにビルの間を縫うように町の駅と駅を繋いでいた。

なぜ地上ではないのか?

地上には、道路と人が沢山いていっぱいだからである。さらに、高い所を走ることで駅をビルの2階や3階に作ることや施設から施設への移動を簡単にでき人の動きが効率化され経済の活性化にも繋がっている。


いまでは、大阪は日本の首都として一番発展している街になっている。

その理由は、首都直下型地震の影響である。


2048年までは東京が首都だったが、その後地震で崩壊。古い高い建物や地下施設が多かったため、震災後の東京はどこも陥没が酷かったという。それにより首都としての機能を果たさなくなった東京を諦め、大阪に国会を移動しようという話がで始めた頃、2052年南海トラフで大阪の多くの建物が破壊された。

しかし、東京ほど壊れずかろうじて機能していた大阪に国会を移動させ、被災した大阪の再開発が勧められ大発展を遂げた。

山や海は見えず、どんなに見上げようと空は見えない、見えてもビルとリニアが空をいくつも割っていた。


2人は、呼んでおいたタクシーに乗り愛の通院のため病院へ向かった。


「この前、旅好きYouTuber(ユーチューバー)が、日本の絶景って言うのやってたんだけど、最近空見てないなーって思ったんだ。」


となんとなく愛が呟くと「あぁー、確かにそうだな。」と和也が答えた。


その話を聞いて、タクシーのAIが反応し「そうですね。確かにこの都会ではなかなか見れないでしょう。しかし、新大阪大学の近くの国立運動公園なら大きな空が見えますよ」と言った。

タクシーの中で運転手と会話をするという事、それはタクシーが出来てからずっと続いてきた文化であり、それは完全自動化になったいまでもその文化はAIにより再現され続いていた。


「そういえば、そんなのがあるって聞いたことあるなー。どんな所なんだ?」


「解説いたします。フロントのモニターをご覧ください。」


そうAIが言うと、フロントガラスを画面にして運動公園の映像が流れ始めた。

映像は、緑の綺麗な芝生の広がる広場の場面から始まり、ドローンやCGや写真などを使った公園のPV動画に合わせて、AIがナレーションをしながら解説を始めた。


公園の遊具の場面

「ここは、子供からお年寄りまでそれぞれに合った遊具があり、子供の基礎体力をあげたり高齢者の健康寿命を伸ばしたりできます」


体育館やテニスコートなどのならぶ場面

「ここは、スポーツならなんでもできるスポーツ広場です。プールや多目的コートなどがあります。」


他にも季節によってかわる花畑や、イベントやフリーマーケットのような事ができる広場などが紹介され最後は、最初の芝生の場面に戻りそこにある小高い丘を上がるシーンに変わった。


「ここでは、ピクニックや散歩のできるふれあい広場です。ここの丘から見る夕日は最高ですよ、ここからなら大きな空を見ることもできます。病院に向かう前によりますか?」


と公園の解説を終えAIが質問してきた。


「なるほど、ありがとう。でも今日は急ぐから行かなくていいよ。」


「分かりました。画面を元に戻します日光にご注意ください。」


そう言ってフロントガラスが外の景色へと変わり病院が見えてきた。


「そろそろ着きます。お疲れ様でした。」


タクシーは、そう言うと病院のタクシー乗り場で停まった。





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