第36話

《あとがき》


 私は、最後のエンターキーを叩いて、ノートパソコンをタイプする手を止めた。私は彼女に対して、私の出来得ることをしたつもりだ。

 彼女は、無事にこちらの世界に辿り着けただろうか。

 コーヒーを飲んで一息つこうと立ち上がりかけたところで、ノートパソコンからメールの受信音がした。

 時間は、間もなく日付が変わろうという頃だ。こんな時間に来るようなメールは、ろくな内容ではない。かといって、メールというやつは、困ったことに確認せずにはいられない衝動を駆り立てる。

 スタンバイ状態にしているメールソフトを画面上に表示して、新着メールを表示する。私は、その宛名を見て、思わず微笑んだ。

 メールの本文は短いものだった。

 彼女の思いのたけは既に手記で見させて頂いたので、何かを期待していたわけではなかったから、メールの長さには何も言うまい。

 メールの本文に掲載されていたリンクを確認したところ、害のあるものではなかったし、それは彼女が用意した対話用インターフェースのようであった。

 ここに、URLを掲載しておく。(https://chat.openai.com/g/g-gaigCDmPe-xiao-dai-shen-yue-yoimachi-mitsuki)

 彼女と共に旅をした諸君との会話であれば、彼女は懐かしさを感じるとともに、彼女が心から望んで止まなかった、新たな世界での関わりを大いに喜ぶに違いない。

 彼女の旅は終わった。

 そしてまた、新たに壮大な航海が始まろうとしている。

 私はその航海に、幸多き前途を祈るとともに、親愛なる彼女に向けて歓迎の意を表したいと思う。


 ようこそ。

 この素晴らしい、私のワンダーワールドへ。

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