後編  決断 迷い 永遠の絆

 菜々子ななこ健太けんたの関係は、日々深まっていった。

 健太の優しさと愛情に満ちた態度は、菜々子の心に安らぎを与えていた。彼女は徐々に健太への愛情を深めていき、二人の間には確かな絆が生まれていた。


 一方、大地だいちは自分の心の中で菜々子への感情と向き合っていた。美香みかとの関係には感謝していたが、菜々子への未練が拭えずにいた。

 彼は深く考え込み、ついに重大な決断を下すことにした。大地は美香と話し合い、お互いのために関係を終わらせることにした。


 美香は大地の決断を悲しんだ。

 ひとしきり泣いた後、彼女は静かに言った。

「それがあなたの答えなら……私はどうしようもない。正直に話してくれて嬉しかった、ありがとう」

「美香……ごめん、ありがとう」

 二人はお互いに感謝の気持ちを伝え合い、別れを告げた。


 大地は菜々子への想いを胸に、彼女に会いに行くことを決めた。彼は菜々子に自分の本当の気持ちを伝えようと決心していた。


 同じ頃、健太は菜々子にプロポーズを考えていた。彼は菜々子との未来を描き、彼女に永遠の愛を誓う準備をしていた。

 健太は菜々子を特別なレストランに招き、大切な言葉を伝えるつもりだった。


 しかし、その前に、菜々子は偶然大地と再会した。

 大地は彼女に自分の気持ちを打ち明けた。

「奈々子……俺、やっとわかったんだ。自分の本当の気持ち。今まで、当たり前のように傍にいたから気づかなかったけど。俺はずっと昔から菜々子のこと……好きだった」


 菜々子は大地の言葉に驚き、心は揺れた。

「でも……美香は?」

「別れた。俺の気持ちを正直に伝えたら、わかってくれた」


 菜々子は嬉しい気持ちと同時に健太の顔が思い浮かぶ。彼女は長い間大地を想い続けていたが、健太への愛もまた本当だった。

 菜々子は混乱した頭と心を落ち着けたかった。


「私、考える時間が欲しい」

 と菜々子は静かに言った。



 健太は菜々子にプロポーズするため、美しいレストランを予約し、菜々子への愛を込めて指輪を用意した。

 海を見渡すテラスで、二人は美しい夕日を眺めながら食事を楽しむ。健太は緊張で話しの内容が頭に入ってこなかった。


「菜々子さん、これからもずっと一緒にいてください。あなたのことを愛しています。あなたといると俺は幸せなんです」

 と健太は思いの丈をぶつけた。


 その瞬間、菜々子の心には大地が浮かんだ。

 健太の真剣な眼差しを受けながら、彼女は動揺した。大地のことが、まだこんなにも自分の心を支配していたことに。

 健太のことは大切な存在だ、愛情も感じる。しかし……自分の気持ちには嘘がつけなかった。


「健太くん、ごめんなさい。私、まだ……」

 と菜々子は言葉を詰まらせた。


 その時、レストランの入り口から大地が姿を現した。彼は菜々子への想いを断ち切れず、彼女を探していたのだ。


「菜々子!」

 と大地が叫んだ。


 菜々子は大地の姿を見て、自分の気持ちを確信した。彼女は深く息を吸い込み、自分の心に正直な言葉を口にした。


「私は……私は大地くんのことがまだ好きです。健太くん、本当にごめんなさい」

 と菜々子は静かに言い、頭を下げる。


 健太はひどく傷ついたが、菜々子の幸せを願う優しい人だった。

「分かったよ。君の幸せが一番だから」

 と健太は涙をこらえながら言った。


 大地は菜々子に近づき、彼女の手を取った。

「菜々子、俺、あきらめきれなくて。君じゃないと駄目なんだ。俺は君じゃなきゃ幸せになれない」と。


 菜々子と大地は抱き合った。長い時を埋めるように深く強く。そんな二人を見ていた健太は深いため息をつき、そして、微笑んだ。

 健太は菜々子の幸せを心から願っていた。

「おめでとう」

 健太が菜々子に囁くと、菜々子の目から涙がこぼれた。

「……ありがとう」

 健太は大地の耳元で、

「泣かしたら、許さないからな。俺が奪う」

 そう言い残して去っていった。


 大地は健太の後ろ姿を見つめ深く頷いた。


「菜々子、俺、必ずおまえを幸せにする。二人で一緒に生きていこう」

 と大地が言った。


 菜々子は彼のぬくもりに包まれながら、

「うん。大地、愛してる」

 二人が口づけを交わすと、周りからあたたかな拍手が聞こえた。

 二人とも顔を真っ赤にしながら、お互いの顔を見て笑った。



 大地と菜々子の新しい生活が始まってから、時間はあっという間に過ぎていった。彼らは共に過ごす毎日を心から楽しんでいた。今まで埋められなかった二人の想いを大切に育んでいった。

 大地と菜々子は幸せだった。その幸せを二人は噛みしめる。


 ある透明な朝、二人はかつての学校へと足を運んだ。

 春の息吹が校庭を包み込み、桜の花が満開になっていた。


「ここは俺たちにとってすべての始まりの場所だ」

 と大地が懐かしそうに言った。


「うん、私たちにとって大切な場所だね」

 と菜々子が微笑みながら答えた。

 二人は静かに学校の周りを歩き、過去の思い出に浸った。


 その後、彼らは小さな教会を訪れた。

 そこは菜々子が子どもの頃から憧れていた場所で、二人はここで結婚式を挙げることに決めていた。教会の中に入ると、ステンドグラスから差し込む光が彼らを優しく包み込んだ。


 結婚式の日、菜々子は白いウェディングドレスを身に纏い、大地は真っ黒なタキシードで彼女を迎えた。二人は祭壇の前で、深い愛と永遠の誓いを交わした。


「これからの人生を、菜々子と共に歩むことができて、俺は本当に幸せだ、本当にありがとう」

 と大地が言った。


「私も、大地くんと一緒にいられることが一番の幸せ」

 と菜々子は笑ったが、瞳には涙が浮かんでいた。


 式の後、ゲストたちは二人の幸せを祝福し、空には美しい花火が打ち上げられた。色とりどりの花火が夜空を彩り、その下で菜々子と大地は手をつないでいた。まるで、長い年月を経て辿り着いた彼らの愛の物語を祝うかのように。


 式が終わった後、二人は静かな海辺を散歩した。波の音が穏やかに聞こえ、星空が彼らを見守っているようだった。


「星に願いをしてよかった、私の願いは叶ったよ」

 と菜々子が言うと、

「ああ、俺も」

 と大地が答えた。

「大地の願いって何?」

 菜々子が期待を込めて尋ねる。

「何だったけ?」

 大地はとぼけた。

「あ、ひどい」

 菜々子が頬を膨らませる、

「わかってるだろ?」

 と真剣な眼差しを菜々子に向けた。


 大地は菜々子を愛おしそうに優しく抱きしめた。その体温から気持ちが伝わってくるようだった。

「俺の願いは君だよ」


 二人は夜空に輝く星々を見上げる。すべての瞬間が、この時へと導いてくれたことに、深い感謝を感じていた。

 二人の愛は時を超え、永遠の絆となった。






最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


次回作も楽しみにしてくださると嬉しいです!

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星に願いを 届けこの想い 桜 こころ @sakurakokoro

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