無垢銀の屋敷
俺は美しい女性たちに囲まれ、屋敷の中へと無防備に誘われた。
"近くで見ると趣味の悪さがより目立つな"
遠くから見た印象は無垢銀の様に白く輝いているようだったが、屋敷に近ずくにつれそれが間違いであったことに気がつく。
"これは鉄か、それとも鉛か"
隣で俺の腕に抱きついている、どこかあどけない笑顔の少女に問い掛ける。しかし少女は笑顔を浮かべているばかりで、いまいち何を考えているのか分からない。
"もういい、まずは俺が休む部屋に案内してくれ"
「畏まりました。お部屋はあちらです」
俺の言葉にようやくまともな反応を見せた少女は、屋敷の入口に入ってすぐ右の大きな扉に指を差した。
その指し示す方へ俺は真っ直ぐ歩き、扉までたどり着くや否や何の躊躇いもなく扉を開いた。
部屋の中を見た俺がまず感じたのは、なんとも言えない懐かしさであった。当たり前だが住んだことも、見たともないこの部屋に何故懐かしさを感じたのかは、当の本人である俺にもわからない。
いくら考えてもその理由が思い浮かばない為、俺はそのことを一旦頭から追い出し部屋を散策する事にした。
"ずいぶん古風な内装だな。それに和洋でチグハグだ"
「お気に召しませんでしたか?」
"いや、結構気に入った"
俺の言葉を聞いた美女は一言「左様で」とつぶやくき、また微笑み姿のまま黙り込んでしまった。先程から思っていたことだが、この女性たちはどうやら俺の行動にだけ反応を示し、それ以外は人形のように動かなくなってしまうようだ。
まるで一昔前のRPGに登場するNPCの様に。
"とりあえず、自分の寝室はわかった。他の部屋も見て周ろう。それと全員で動くのは面倒だから幼顔のあんたと、豪華な服装のあんただけで良い"
「畏まりました」
俺の指示を素直に聞き入れる美女達は、静かに屋敷の入り口へ戻って行った。一方の俺に指名された二人の美女は、微笑みを浮かべたまま、俺が出す次なる指示をただ待ち続けていた。
“よし。じゃあ次の部屋に案内をしてくれ。そうだな。次は浴室を見てみたい“
「「畏まりました」」
俺の要望にただ大人しく従う二人は、部屋の扉を開けると退出を促す。俺は大人しく部屋を後にすると、それを確認した二人の美女が、俺の前後を1人ずつで挟む形で浴室がある場所へ案内を始めた。
”なあ、此処はずいぶん綺麗だが、俺が来る前は誰か住んでいたのか?“
俺はこの館に入ってから、ずっと気になっていた事を尋ねる。この屋敷は外見こそ悪趣味だが、屋内は日本と西洋を組み合わせたチグハグで異様な様相となっている。
「こちらは
そうだ、どこか懐かしく感じるこの雰囲気は、昔よく遊びに行った祖父母の家にそっくりであった。古びた日本家屋の雰囲気とは裏腹に、西洋の珍しく雑貨や家具が多く置かれている為、幼かった当時の俺はとても新鮮に感じていたのをよく覚えている。
流石に、ここまでヘンテコな内装では無かったが......各部屋扉の位置や曲がりくねった廊下、明らかに屋敷の外見よりも明らかに広い邸内。
“ここは一体どうなってるんだ?“
「......」
俺は疑問に思った事をそのまま口にする。しかし二人の美女はこの事に対して一切口を開こうとしない。
“答えられないのか。それとも、隠したい事だけは俺の命令に背けるのか。随分都合の良い忠誠だな”
「......」
冷たく言い放つ俺の言葉に、一切の反応を示さない女達に一抹の不気味さを感じつつも、俺は屋敷の奥へと進んでいく。
そして2分ほど歩いていると、先導していた方の女が足を止め、一つの扉の前で俺の方に振り返った。
「こちらが浴室になります」
短くそう伝えると女は扉を静かに開け放つと、そこにはやはりどこか懐かしさを感じる脱衣所が広がっていた。
そしてその奥には......やはり祖父母の家と同様、古風な木目調の壁に似つかわしくない、西洋の浴槽が設置されていた。広さは脱衣所と合わせて8畳程度と、普通の風呂場より少し広い程度だ。
“ここまでそっくりなのか”
「お気に召しませんか? それでしたら、内装を変化させてはいかがでしょうか」
“いや、別に気に入らないというほどでは......というか、内装を変化?”
「はい。
内装を変えるって、つまりこいの女達が模様替えするという事だろうか。見たところ俺よりも非力そうだが、先ほどの手の力もあるから案外肉体労働は得意なのかもしれない。
そんな気の抜けた事を考えていると、女の口から予想外の言葉が飛び出してきた。
「
“なんだか漫画や小説の様だな。もし俺が子供だったなら、飛んで喜んだだろうよ”
イマイチその心象風景を投影ってのはピンとこないが、まあそれは後でゆっくりやっていけばいいだろう。それよりも海風と砂で汚れたこの体をまずは清めたい。
“そのよくわからんとんでもパワーは後で試すとして、早速この風呂に入りたいんだがいいか?”
「かしこまりました。では用意いたしますので少々お待ちください」
そう言うと二人はそそくさと何かを準備しだす。すぐ入れるんじゃなかったのか。まあ、そんな急いでるわけでもないから、俺は大人しく待つことにした。既に死んでる事だしな。
「お待たせいたしました」
“おお、なんだやっぱりすぐは入れるんじゃ...おわっ!?”
俺は女の方に視線を向けるとそこには、男の本能を刺激する様な豊満な胸が目に入る。その次に全身、くびれる所とふくらむ所がはっきりした体つきに見入ってしまう。
「どうかしましたか? さあ、こちらへご奉仕します」
「さあさあ、ご遠慮なさらないで」
二人の女にまるで幼子の様に服を脱がされ、手を引かれながら浴室へと連れられる。
それからは、もう。何と表現するべきか。生きていた頃に立ちんぼに小金を渡していたした事や、遊郭へ立ち入る事もままあったが、そんなものとは比べ物にならない快楽に、気がつくと俺は意識を完全に支配されていた。
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