第3話 刃は心を成す
「何者だ?」
「あ…こんちゃーっす」
異色な出会いを果たした両者との間には、
かたや時代に見合わぬ服装をした
(って…女の人??しかもなんか見覚えがある気がする。なんかの偉人かな?)
嵐山は失礼な
「貴様…死にたいのか?」
しびれを切らしたのか、無礼な態度をとり続ける嵐山におよそ女性とは思えないほど鬼のような
(余計なこと考えちまったけど、この人…やっぱ
ただ、
自身の
「貴様…なぜ刀を持っていない?」
「あぁ…?えっと、
嵐山は、過去という点と、剣豪という二つの要因から、
だから、相手がこのような質問をしたのだと考える
だが、あえて刀を扱っていることに否定したのは、後々何かをするつもりだったが、少なくとも刀を持ち合わせていない
「…嘘をつく必要はない。貴様、相当な
嵐山が相手の実力を
刀を持っているというのならまだしも、この女の前で一度も刀についての話題さえしたこともないというのに一瞬にしてその実力を見抜かれるのはかなり
「……なんで分かった?刀使ってんの見せたことないだろ?」
「おちょくっているのか?貴様ほどの
「それで、貴様は何者なのだ?答えなければ―――」
そう
基本的にこういう時の対応は未来から来ただとか、そういう
「え~と…」
さすがに
「ちょっ…待ってくれよ!―――って…あぁぁ!!普通に面倒くせぇなぁ!!俺ぁ未来から来たんだよ!!未来から!!」
当然のように未来から来たなどという言葉に相手は
もうこれ以上どれだけ言い訳を重ねようとも納得してもらえるかもしれないと
「…どうやら、本当のようだな。まぁ、にわかに
そう言うと女は、ほとんど抜かれたといっても差し支えのないほどに刀身が
「………えぇ?なんでやねん?」
もちろん、この後はなんで俺が未来から来たのを信じてもらえたのかという、事について
正直なところ、
もちろん、一緒に歩いている
嵐山は相手の
「着いたぞ。ここが私の家だ」
そう言われて案内されたのは
そう考えたらかなり凄いものだと思える。
「
そう軽く告げると、相手の女は、そそくさと小屋の中に入る。後を追うように嵐山も土足のまま小屋の中に入る。
入るなり、竹の
本当にすることも何もないので、
「…急だが、先程の件を謝罪を…させてくれ…先程は汚い
「え?急ってか、唐突すぎ?んぅ…??」
本当に
「私は…底が知れない
目の前であれだけ
「へ~?まぁ別にね、何とも思ってなかったってのが
「…可能な限り受け入れよう」
明らかに不服そうというか不安そうな表情をして、
「とりあえず、先に移動してもいい?そこでやりたいことがあるんだわ」
そういうと、嵐山は刀を用意して、ある程度動き回れる広場に案内してくれと要求する。
別に
人の声どころか
ただ、そんな現状でも
「ここで大丈夫か?」
周りの
「…はぁ…そういえば自己紹介をしていなかったな、私の名前は
明らかに
「俺は
言いたいことがありすぎて、話の順序がごっちゃになってしまっている。
「それ以上私の性別に関することは言わないでくれ…先に
申し訳なさそうな表情はしているのは確かだが、
今思い返してみると、
「まぁ…この話はやめましょう。とりあえず、目の前の―――」
思考を
さっきまでの雑な道を通っていた時は辺りが全て竹で包まれていて
それは、手入れがされていない様子だったから当然なのかもしれないが、それでも今目の前に広がる
ただ、地面の様子や
要するに、多少の手はくわえられているものの、ほとんどが
立っているだけで
「ここが、私が
「…あぁ、ここなら…俺も強く…」
こんなにも
その様子を少し離れたところから見ていた杉山が物置の方向に向かい、何かを持ってきた
「
その物体を触った
「やっぱり…バレてたか。」
ただ、
元よりそもそも手加減するつもりもなかったので
その構えに杉山は多少の
この両者を一言で表すならば、刹那と永遠。
似ているけど、全く異なる二人の
バシュゥゥ―――カサガサガサカサユラユラ
既に、初めの一太刀は、放たれていた。物体同士が激しくぶつかり合う音が辺りの
初めに
嵐山の戦闘の歴史においてこの
ただ、今回の相手は違った。
当然と言わんばかりにその
嵐山はその様子に
初めての
その様子を見かねた杉山は非常に悪い笑みを嵐山に対して向け、見せびらかすように手の甲を突き出し、指を天に向けこちらに来いと手招く。
その行為に乗る嵐山は、今一度杉山に対して
もちろん手ごたえはあったのだが、今回も
刀を頭上から下向きに伸ばし、目を
ただ、今回は一歩も引かず、その場から
高揚によって呼吸すらできなくなるほどに嵐山の調子は
にもかかわらず、そのすべての攻撃を軽くいなし、避けきる。
自分の力とはどう考えても釣り合わないほど軽量な力で受けきられるのに少しだけ腹は立つが、逆にその
嵐山は挑発的な態度による
なのにだ、どれだけ速く刀を振るおうとも、どれだけ
杉山の表情にはまだまだ
「…やめだ」
杉山がそう小さく発すると、今までいなし続けるだけだった刀を、
自身の速さが上乗せされた想像以上の痛さに
杉山はその様子を手助けするでもなく頭を踏みつけるでもなく、ただ見守っていた
「貴方は…『
突然話をし始める杉山に戸惑う暇すら与えず、次の言葉を放つ
「今から話すことは一武士の
先ほども言った通り、この言葉とこの考えは、杉山自身が発案したものだ。
だが、嵐山はこの言葉と思想に聞き覚えがあった。どこで聞いたかということは覚えていない。単純に似たような考えを抱いたことがあるだけかもしれないし、それっぽいことを聞いたことがあるだけかもしれない。
ただ、この杉山が話してくれた内容に絶対的な聞き覚えがあるのだ
「貴方は…これを
この発言など一個人の
だが、嵐山にはこの言葉が妙なほどに納得できる。
「私はいつでも戦ってあげよう。技術を高めたいという目的でも、身体を鍛えたいという目的でも、何でもいい。貴方との戦いは、惜しいと感じることさえあれど、十分に楽しいと思えるからね。」
そう言い残すと、嵐山に背を向けてただ一人広大な土地の中心で舞のように綺麗な素振りをし始める。
嵐山には、その背中が、ただ過ぎ去るだけのはずの背中が、辛く、重く鋭利なナイフで刺されるように痛い。
「…刀と、心をか…」
初めて聞いたはずの言葉なのに、嵐山自身にはこの行為が自分にはどう足掻いてもできないような気がした。
「…杉山さんは…なんであんなに静かなのに…楽しそうだったのかな…」
そう考えた途端に脳裏をよぎる二つの人影
片方の影には常時黒塗りのようなもので上書きされており、姿が確認できない。もう片方の影は姿から顔まで視認できる。
非常に端正な顔立ちをしている女性であり、腰のあたりまである邪魔なのではないかと思うほどに長い髪が特徴的であった。
その二つの影は、刀を振るっていた。女性が、男に教えるようにしていた。模擬形式の試合のようなものを要所要所教えるようにして行っていた。
女性のほうは、模擬戦の時こそ冷静沈着といった姿で、元よりきれいな容姿が合わさって非常に様になっていた
ただ、模擬戦が終わったらさっきまでの氷のような無表情が嘘のようになり、楽し気な表情に早変わりする。
『泉允!刃は心を成すが全然なってないよ!!』
『もう…やっぱり強いな君は。全く勝てる気がしないよ。子供の前なんだからちょっと位手加減してほしいところだけどね。』
(…父さんの声だ…ってことは、あの人ってもしかして…」
今、
目の前で
「そう…だったのか。昔の俺のほうがすげぇじゃん。っし行くか。」
元より、嵐山は足りなかったのではない。欠けていたのだ
今、勝利へのピースはすべて整った。
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