2024/05/08(水)_肉体強化の魔法

 本日も魔法陣の選定課題。雨季の討伐会〝トライ・ブルー〟で各団体に貸出す魔法陣を選ぶのだ。もう資料作成に取り掛からないと間に合わない。以下六種類から貸し出す魔法の候補を選ぶのだが…。

 

  【ヴレア・ボール_火球を放つ魔法】

  【ウォータン・ボール_水球を放つ魔法】

  【サンディア・ボール_雷球を放つ魔法】

  【サンディア・ランス_雷槍を放つ魔法】

  【アーズ・ランス_土槍を放つ魔法】

  【ウィンディン・ナイフ_風刃を放つ魔法】

  【ヴィルディイ_肉体強化の魔法】

 

 雷と土属性の魔法を一種類ずつ貸し出すとかが無難かなあ。でもいまいちピンとこないというか…。やっぱり自分の魔法に関する知識は浅い。そういうものを人に勧めるって難しい。

 カバンを開くと母に送る予定の栞、マグカップが目に留まった。今日の定時後に郵送の手続きを行う予定だ。私はこの二つを暫くの間、眺めていた。

 これを選ぶのだって最初は難航していた。ただアセロラから母とのエピソードを辿ってみるようにアドバイスを貰った。結果、母が猫好きだという事に気が付けた。(私は間違えてフェネックグッズを買ってしまったが…)母の好みや性格を考慮できなければ、無難なモノしか送れなかっただろう。

 

 まてよ…。

 

 今回の課題も同じことではないのか? 「どんな魔法を選ぶのか?」にばかり気を取られていた。「どんな人が魔法陣を使うのか?」も同じくらい大切なはずだ。

 

 いける気がするかも。慌てて机の資料を広げ直した。ランチュウの調査した部分の資料だ。ランチュウは各エリアだけでなく、そのエリアを使う予定の団体についても調査してくれていた。近所の八百屋や肉屋、中小企業を回っている。去年の討伐会のインタビューだ。

 私は暫くの間、インタビューの資料とにらめっこしていた。なるほど、参加団体によって戦い方はそれぞれ異なるようだ。肉体に自信あるものは己の身体を武器とするし、自信の無いものは武器を求める。集団戦法が得意な団体もいれば、個人個人が独自の方法で戦う団体もある。

 

 私は一つ疑問に思った。

 

 例えばだが、既に戦い方が決まっている団体に攻撃用の魔法陣を貸し出したとしよう。彼らはそれを使ってくれるだろうか? いや、使ってはくれないと思う。そしてそういう団体はかなり多いかもしれない。じゃあ彼らにはどんな方法で魔法陣を宣伝しようか?

 

 今度こそ私は閃いた。

 

 肉体強化の魔法だ!

 

【ヴィルディイ_肉体強化の魔法】


 肉体強化の魔法は筋力を一時的に強化する魔法だ。どんな戦い方とも相性がいい。これなら既に戦い方を決めている団体でも使える。皆使ってくれるはず。私は自分の閃きに小躍りしていた。

 ただ流石にこれだけだと少ないし、雷属性、土属性の魔法も貸し出そう。こっちは戦い方を特に決めていない団体向けである。これならどの団体に対してもワークツリーの魔法陣をアピールする事が出来るはずだ。早速私は資料作成に取り掛かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る