2024/05/06(月)_ゴブリン
本日も魔法陣の選定課題。雨季の討伐会〝トライ・ブルー〟で各団体に貸出す魔法陣を選ぶのだ。今日はランチュウ、アンプと郊外に出た。実際に会場へ出向く。アセロラは別の業務で手が離せなかったので、このメンバーで行くことになった。ランチュウは相変わらずツンツンしている。歩くスピードがやたら速い。私も特に話す事はないし、黙って街のはずれまで歩いた。
「ここら辺でありますな」
アンプが周囲を見回す。魔物を討伐する会場の一つだ。街の外れにあるワークツリーから更に少し歩いたところの原っぱ。以前、花粉症で病院へ向かう際に通過したところだ。大きな湖があって、それを囲むように草木が生えている。確かに水属性の魔物は多そうだ。
「メモを取ったら次に行く」ランチュウがそう告げた。
「え、もう行くの?」
「僕は時間を無駄に出来ない。君らとは違う」
なんじゃその態度は! 流石の私も怒っちまうぞ。そう思って何か言葉を探している時だ。ガサガサと草むらを掻き分ける音がした。三人ともピタリと静止した。静かに振り向くと、そこには一匹のゴブリンがいた! 身長は六十センチ程、小型だが悍ましい顔をしている。小刻みに震えているのは興奮のサインだ。
コイツ、仲間を呼ぶぞ!
そう思った直後、私はゴブリンに距離を詰め、めいいっぱいヤツを蹴り上げた。魔物との戦いはやるか、やられるかである。そしてゴブリンとの戦闘もお婆ちゃんから叩き込まれていた。奴らの前では決して屈んではいけない。奴らは棍棒みたいな武器を使うし、最悪袋叩きにされる。こちらに武器がなければとにかく蹴り飛ばす。
「ほら、逃げるよ!」
私はランチュウとアンプの腕を掴んで草原を後にした。ゴブリンは悪知恵が働く。仲間が隠れている可能性もある。
一目散に丘を下りきった。五百メートルは走っただろうか。ここまでくれば流石に大丈夫なはず。アンプはともかく、ランチュウは走りなれていないようだ。切り株にに腰を下ろすと、ゼェハァ言いながら汗を拭った。トレードマークの丸眼鏡も傾いている。なんか傾いた眼鏡が地味にツボだった。後からジワジワ笑いが込みあげてくる。
その後も三人で各エリアを回った。体力を使い切ったランチュウはカラカラに干からびており、皮肉も説教も飛んでは来なかった。それに一人でズカズカと進んでしまう事もなくなった。しかもそれだけではない。
「おい、ちょっと待て」とランチュウ。
私とアンプが足を止めて振り向くと、ランチュウは魔法を詠唱し始めた。
【ロー・ヒール_下級回復の魔法】
ランチュウは私たちに回復魔法をかけてくれたようだ。足首の疲労が随分軽くなったように感じる。
「あ、ありがとう…でも突然どうしたの?」
「別に…何でもない」
その後ランチュウが単独行動を起こす事はなかった。疲れていたのは確かだと思う…が、それだけでも無いのかもしれない。
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