2024/04/28(日)_マグカップ
日曜日、アセロラと鈴色歌劇団のミュージカルを観に行った。人生初のミュージカルである。初めての劇場は大人のオーラ全開であった。だいぶ入口できょどり倒したと思う。職務質問されなくてよかった! というかアセロラと一緒で良かった。
ミュージカルの内容は森の妖精と植物学者の恋愛ドラマだった。森林破壊に対して声を荒げる学者の歌が実に印象的だった。
これが本物…!(語彙力は死んだ)
力強い歌声に戦慄した。「本当に同じ人間?」って思うくらいパワフルだった。遠くの席(格安)でも十分に楽しめる。芯のある声に感情が乗っていて、聞いているだけでハラハラドキドキする事が出来たのだ!
そして舞台装置や背景のパネル絵も素晴らしかった。背景パネルにはイントそっくりの街が描かれている。ただし全体的に彩度を低めの配色だった。恐らく主人公のトレードマークである赤いマフラーが美しく映えるように計算されていた。しかも家の一つ一つもとても丁寧に描かれている。お店の看板や、八百屋の野菜などなど…私はあの絵だけでも十分に楽しめた。
「こんな仕事もあるんだなあ」
私はしみじみと感じた。
その後、アセロラと喫茶店で感想会をした。アセロラは魔法の演出がお気に入りだったそうだ。確かに水魔法の使い方が凄かった。青く輝くシャボン玉がステージ上で輝く様は美しい星空の様だった。それらのシャボン玉は全て凍りついた後バラバラに砕け散り、次の瞬間に主人公が目を覚ますのだ。そして幻想的な空間は主人公の夢であったことに観客も気づかされる。よくできた演出だった。(お前誰目線だよ)
まさかこんな風に観劇の感想を話し合う友達が出来るとは。しかもそれがお洒落で笑顔の似合う陽の者だとは…。少し前の私には想像もつかない事である。
最後に食器屋によった。今までは最低限のものしか無かったから…お皿とスプーン、フォークを購入した。
「リン!これ可愛くない?」
アセロラが持ってきたのは陶器のマグカップだった。薄いピンク色をしている。確かに丸みのあるシルエットは可愛らしいと思った。
「これお揃いで買おうよ」とアセロラ。
お、お揃い?
陽の者はすぐそういう事を言う。
「お揃いって…それにコップなら寮にもあるし」と私。
「でも私たち専用のがあった方がいいよ。これ可愛いし」とアセロラ。
こういう時のアセロラは笑顔百パーセント。
「いや、まあそうなんだけどさ…」
「もしかして照れてるの?」
「それは断じてチガウ」
結果アセロラに煽られる形でマグカップ二つを購入した。私は薄い水色のやつ。
「お揃いかあ…」
やはりお揃いって慣れない。例えば片方が壊れてしまったら…もう片方は切ない感じになってしまうのでは? それだけじゃない。元々アセロラとこんなに一緒にいるとは思わなかった。すぐに疎遠になると思っていた。だからもし本当にそうなったら…このマグカップは少し寂しくなるのだろう。はあ、本当にネガティブな奴だぜ。アセロラはそんな事、全く考えていない様に見える。
昨日姉の事もあって、少し心がざわついていた。「私このままでいいのだろうか」とか。「芸術の道から外れた私を彼女はどう思うのだろうか」とか。あれこれ余計な事を考えてしまう。でも〝今いる場所〟もそんなに悪くはないと思うのだ。少なくともそこは姉にもわかってほしいなあ。そう感じた一日だった。
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