2024/04/27(土)_実家からの手紙

 実家から手紙が届いた!

 内容はこの間のプレゼント(サングラス…)のお礼である。

「サングラスありがとう。リヤカーで町に野菜を売りに行く時、三人で掛けています。眩しくなくて良いです」

 成程、三人で掛けてくれているのか。

 送った手前申し訳ないが、それはやめてほしい。全員グラサンの行商人って普通に怖いだろ。そこの大根とか買いたくねえし。

「ママ友の間でも『ニーズヘグ(一昔前に流行したイケイケバンド)みたい!』ととても評判です」

 

 イジられてる!!!

 

 娘の送ったサングラスで両親と祖母が、ご近所さんの井戸端会議ネタにされている。眩暈がしてきた。今更「使うな」と言っても無駄だろう。少なくとも母さんとお婆ちゃんは使い続ける。イケイケバンドであり続けてしまう。

「それとお姉ちゃんが五年ぶりに帰ってきました」


 ええ!? そうなの!?

 

 そしてこのタイミングでその話をぶち込む!?

 姉は五年前に画家になると実家を飛び出し、その後音沙汰がなかったのだ。本人からイント行くとは聞いていたが、それ以外の情報もなかった。唖然とするが、手紙はまだ続きがあった。

「お姉ちゃんは金メッシュを入れていたので、サングラスがとても似合いました」

 姉にも見せたの!? 私の送ったクソダササングラスを! 送ってから気が付いたけど、あのサングラスカミキリムシの顔面みたいなんよ。レンズがあらゆる角度から尖り過ぎてるんだって!

「お姉ちゃんは『リンって今、こういう感じなんだー』と嬉しそうでした」


 何か凄い嫌!

 

「お姉ちゃんはアナタに会いに来たそうです。イントにいると知ると、凄く喜んでいましたよ。で、翌朝帰っていきました」

 姉にイントにいる事がバレた…。

 姉は五年前にイントに移住し、画家として生計を立てている、はずである。 五年間、一ミリも音沙汰が無かったので本当のところは分からない。だがあの姉の事だ。彼女が生きている=画家としてやっているのだろう。あの人はそういう人だ。

 背中が汗ばんでいた。母はどこまで教えたのだろうか。私が芸術の道を逸れた事は知っているだろうか。もしワークツリーの名前が出ていれば…姉がここに辿り着くのは時間の問題である。私は浅くため息を吐いた。

 姉に会いたくない、訳じゃない。いつまでも逃げ回る訳にもいかない。それも分かってる。姉から連絡が来たら、その時は覚悟を決めよう。

 

 取り敢えず実家への返信を書いた。「スライムと一緒に炒める漬物を送ってください」と。姉の話題は殆ど触れなかった。小難しい事は一度シャットダウンだ。漬物は雨季までに手に入れておきたいし。へへへ、漬物楽しみである。

 

 

 


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