2024/04/23(月)_唐揚げ定食
今日も自習である。
何かこんなに自習っていいのだろうか。慌ただしくしている先輩方を見ると、申し訳なくなる。まあ先輩達も忙しいのだ。いつも新人どもに構っている暇はないのだろう。
お昼は定食屋〝フリリット〟に行った。
唐揚げ定食が食べたい。
だが絶対に太る。
アセロラも神妙な面持ちである。
「これはカロリーやばいかな」とアセロラ。
「やばいだろうね」と私。
だがしかし、唐揚げが食べたいのだ。サクサクの衣とジューシーな鶏肉。私たちの口は完全に唐揚げ定食一択となっていた。対案は存在しない。やって後悔するか、やらずに後悔するのかの境地まで到達している。どうする、やるのか? やらないのか?
その時、アセロラが一人の店員を指差した。
「リン、あの人どう思う?」
「どうって綺麗な人だけど」
「そうだよね。で、この唐揚げをこの世で一番食べているのは店員さんだと思うんだよ」
ほう…
「続けたまえ」
「つまり、あの唐揚げは食べても太らない…」
アセロラは頭がいい。先日の魔法陣改修依頼では散々世話になった。アクティブな外見や性格とは別にインドアで知的な面を持つ彼女を私は尊敬している。よってアセロラの主張を信じることにした。私達は二人で唐揚げ定食を注文した。
ああ、美味しい。
空きっ腹に肉汁が染み渡る。サクサクじゃなくて、ザクザクの衣。これぞ、お店の味って感じ。安くて美味いを追求すると絶対に揚げ物に辿り着く。これは間違いない。
そして昼休憩後。ヤバい、超眠いんですけど…。
私は揚げ物を食べると何故か眠くなる。自習だとなおさらだ。がくっと頭が落ちそうになって、慌てて顔を振った。先輩たちが真剣に働いている横で、新人が昼寝をこく。こんな事があってよいのあろうか、いやよくない。
私はワークツリーの一階から三階まで、螺旋階段を行ったり来たりした。現在、三往復目に突入する。ダメだ、全然眠気が取れない。まだまだ階段を上る。三階を超えて、屋上を超えて、どこまでも階段を上がり続けていた。待てよ、この階段はどこに繋がっているんだ? そう思った直後、足場がぐにゃりと歪むのを感じた。
「え、嘘? なにこれ!」
自分が真っ逆さまに落ちていく。あまりに現実離れした状況だ。ここまで来て、私はやっと悟った。
あ、これ夢だわ。
はっと気が付くと、私は二階のフリースペースにいた。デスクで参考書を広げて自習している。そして目の前にはニヤニヤ笑うアセロラと…アキニレがいた!
う、うにゃああァ!
違う! これは誤解なんですゥ!!(違わない、誤解もない)
私は決して怠惰な心から睡魔に負けたわけではないのであります! 食べた後に眠くなるのは生理現象! 避けられぬ運命!! だが、そんな事を流暢に話す余裕はない。私は「え、いや、ははは…」などとヘラヘラする事しか出来なかった。アキニレはにやけ顔のまま、無言で開発ルームへと帰っていた。
怖い怖い怖い…!
罪悪感と少しの恐怖によって、その後睡魔に襲われる事はなかった。めでたしめでたし…。
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