2024/04/07(土)_衣服の新調

 社会人になって初めての休日じゃあ!

 今日はアセロラとショッピングの約束。ダサすぎる衣服を新調するのだ。

まず、はっきりと明記しておく。決して私のセンスがダサい訳ではない。私自身あまりファッションに興味がなかったし、田舎にはお洒落なアパレルは存在しない。しかも近所のおばちゃん達が昔の古着を次々とくれるのだ。おばちゃん達のご好意を無下にする私ではない。つまりそういう事なのだ。(言い訳ではない)

 今日まで私の服は二十年前の田舎ファッションだった。先週イントに着いてすぐに気が付いた。皆、スタイリッシュなのだ。私の服は袖にフリルがついていたり、何かとお子様感がある。全身から冷たい汗が噴き出しっぱなし。

 アセロラは私の服を見て「一周回ってイカすのもある」と言ってくれた。彼女はお洒落だからなあ。アセロラ程の手練れなら、この服をカッコよく着こなすことも出来るのかも。

 

 が、私には無理だ。

 

 そもそも手札が足らなすぎる。結果、彼女が気に入った服はあげる事にした。そしてタンスの空いたスペースを埋める為、今日はお買い物なのだ。


 駅周辺には服のブランドが数多く出店している。高級志向な店や学生向けの店、メイドみたいなフリフリばかりを扱っている店もある。ちなみに?華街を少し外れると、古着屋さんもちらほら在るそうだ。(アセロラ談)

「〝エーミル〟なら安くいし可愛いから大丈夫!」

 私たちは駅前のアパレル〝エーミル〟に入店した。学生時代からアセロラ行きつけのブランドだそう。(行きつけのブランドだってさ、私も言ってみたい!)アセロラがお勧めを幾つか見繕ってくれた。こういうのちょっと嬉しい。今日はアセロラ様様である。

 だがしかし、アセロラのオススメは基本露出が多い。脚か肩のどっちかが出ている。


 何故だ。


「ちょっと露出が多くない?」

「えー、こんなもんだよ、ウチのお母さんだって『脚は出せるうちに出せ』って言ってたし」


 お母さん?


 そんなお母さんがいるのか?


 私の家では「お腹冷やすと風邪ひくわよ~」しか言われた事がない。そうかアセロラが陽の者で、私が根暗なのは運命で決まっていたのか。言い換えればディスティニー。さらっと故郷に責任転嫁を行いながら、ブラウス二着と、新しいスカートを購入した。出来る限り無難な服をチョイスしたつもりだ。ブラウスは白のシンプルなもの。だが、首元の黒いリボンが可愛かった。こういう繊細な可愛さが好きだ。アセロラは膨れていた。

「なんか無難じゃないー?」

「まあ今日買ったのは会社に着ていく服だし…」

 私がもっと都会に染まったら買ってやるよ。心の中でそう告げた。


 夕飯は繁華街のレストラン〝カモノハシのハシ〟に入った。アセロラが家族とよく来る店らしい。海鮮アヒージョが絶品だった。パンをアヒージョのオイルに漬して食べると、口いっぱいに海老の香りが広がった。美味しい。とにかく美味しい。

「美味しい、本当に美味しい!」と私(今日一番のテンション)

「でしょ?あとパンにムール貝を乗せるのも超おいしいから!」

 良い時間だった。私は同い年の友達があまり多い方ではない。昔から一人で絵を描いてる様な子供だった。今日みたいなのは新鮮だった。服屋を回る時もアセロラはいろいろな場所を案内してくれた。アパレル以外にも、美味しい定食屋や、ガラス製品の綺麗な雑貨店、冒険者ギルド、見晴らしのいい公園などなど。私がイントに長年住んでいたとしても、こうはなれなかったと思う。アセロラは好奇心が旺盛な女の子だ。きっと彼女は自分の世界を明るくするのは自分自身だと知っているのだ。私もそういう部分は見習っていきたい。

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