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 あれからひとまずショウを牢屋に入れ、三人は薄暗い中で会議をしていた。とはいえ場所はイトリの詰所ではなく、腰掛けているのもそこら辺にあった簡素な丸椅子だ。中には椅子の足がぐらぐらしている物もあり、座りにくい。

「じゃあ、その脱獄癖をどうにかしなきゃなんねぇってわけっすね」

「チート能力の弊害でしょうか」

 ウォレスとアークレナにも、丘の上で聞いたショウの脱走衝動のことを話した。背もたれのない丸椅子だからつい前かがみになり、三人は文字通り顔を突き合わせている。見回りの騎士が不審な目でこちらを見ているが、背に腹は代えられない。第一、こんなところで会議をする羽目になった原因の一端はそっちにあるのだ。

「ミルバさんって、意外と大胆なことするんだなぁ」

 原因の全体を担っている青年が、牢屋の中からまるで他人事のように口を開いた。ミルバは恨みがましい視線を牢屋に向ける。なぜミルバが大胆なことをしなければならないのか、胸に手を当てて考えてほしい。

 何度も脱走するショウへの対抗策として実行したのは、イトリの三人が牢屋の前に居座るという物理的な方法だった。流石にこれでは脱走もできまい。代わりに居心地の悪さや、尻の痛みが犠牲となったが。一番壊れかけた椅子に座っているウォレスが、座ったままぐるりと体ごと牢屋に向けた。

「お前のせいだろーがよ」

「その節はお気遣いいただき、たいへんありがたく」

「調子のいい転生者だな」

「ところで、脱走衝動は今もあるのか?」

 アークレナの問いに、ショウは硬いベッドの上で首を捻った。

「今はそれほどでもないけど……」

 大の男が三人、牢屋の前に鎮座していれば脱走する気も起こらないようだ。とはいえ、ずっとここにいるわけにもいかない。

「せめて次の儀式の日が分かればいいんですが」

「神官からは何もないな」

「マジで牢屋ん中で飯食うんすかぁ」

 まだぐるりと体を回し、鉄格子を背もたれ代わりにしてウォレスが大きく後ろに伸びる。斜めに浮いて二本足になった椅子が、ぎしぎしと今にも折れそうな音を立てた。

「あのー」

 そんなウォレスの斜め奥から、鉄格子越しにショウが手を上げている。

「おれが言うのもアレなんだけど」

 何でもかんでも大声で主張するショウにしては珍しく、おずおずとした様子だった。三人の顔が牢屋へと集中すれば、ショウは上げた手で自分を指さした。

「ミルバさんたちがこっちに来るんじゃなくて、おれがそっちに行く、ってのは?」

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