第2話 あれ、下半身の様子がおかしいんですが?

 寧々とお泊まりデートをして数日が過ぎた頃。相変わらず熱愛真っ只中のメッセージが届いてニヤニヤしていたのだが……。


 実は下半身の状態が芳しくなかった。


 何だが痒みがあるし、尿をする時に痛みを感じるのだ。


 今まで感じたことがなかった異変に、恐くなった俺は仕事終わりに泌尿器科へと駆け込んだ。


 もしかして何か病気だろうか?

 それよりこの痛みと痒みをどうにかして欲しい……。だが処方された薬を服用しても一向に治らない。


 数日待って出た検査の結果、先生に下された結果は「クラミジア陽性」だった。


「く、クラミジア? え、嘘でしょ? 俺が?」

「貫地谷さん、お付き合いしている方はいらっしゃいますか? その方にも検査をお勧めします」


 風俗にも通ったことがない俺だが、いつ感染したのだろう?


 恐くなった俺は真っ先に寧々ちゃんに連絡した。クラミジアは最悪不妊の原因になる恐ろしい性病なのだ。

 しかも、この前会った時に生で挿入までしてしまっている。


「寧々ちゃん、ゴメン! 俺、寧々ちゃんに性病を移したかもしれない!」

『え、どういうこと? 性病って……嘘でしょ?』


 俺はここ数日の異変を告げ、自分がクラミジアに感染していたことをカミングアウトした。


 最悪、振られる可能性もあるが、彼女を救うためには仕方ない。


『嘘、そうなの? でも寧々は全く症状がないよ? 一回くらいのエッチじゃ感染しないんじゃない?』

「けど先生は感染している可能性が高いからって! 頼むから検査を受けてくれ!」


 少しの沈黙の後、小さなため息の後に彼女は了承してくれた。


『もう、いおりん気をつけてよー?』

「本当にゴメン! 寧々が病院に行ったら会いに行くから」



 ——だが、その後一向に寧々から病院に行った報告はないまま時だけが過ぎてしまった。


 メッセージや電話はいつものように来るのだが、モヤモヤした感情が心の隅で燻り続けていた。


「あのさ、寧々ちゃん……病院は行った?」

『あー、ゴメンね? あれさー私は大丈夫だと思うんだよね。だって何もないもん』


 何もないって——それじゃ、手遅れになってしまうのに⁉︎

 自分の体のことなのに、無責任な発言を繰り返す寧々に怒りが湧いてしまった。


 大体、彼女が性病かもしれないのなら、一向に会いに行けないじゃないか!


「寧々ちゃん、自分一人のことじゃないんだから、ちゃんと行ってくれ! 病院に行かないと俺は寧々ちゃんに会えないよ」

『もう、いおりんは怒りん坊なんだからー。それより……ねぇ、今日もビデオ通話でエッチしよ?』


 俺は真剣に怒っているのに、何で……!


 だけど可愛い声でねだられたら、結局ズルズルと彼女のペースに巻き込まれてしまうのだ。最悪にも程がある……。


『ん、んン……♡ あァン、いおりん、気持ちいィ』


 確かに遠距離恋愛をしている俺達にとって、今のままでも十分なのかもしれない。


 毎日のように連絡を取り合って、電話して。

 正直、今までの彼女よりも大事に思えていた。


 でも、不妊の可能性があるのに——……。



 そう思いながら過ごしていたら、神妙な声色で話したいとことがあると伝えられてしまった。


 正直、嫌な予感がした。


 実はここ数日、毎日のように来ていたメッセージが来なくなっていたのだ。

 そんな状態で電話も出来るわけもなく、そっとしておいたのだが、それが良くなかったのだろうか?


 やっぱり遠距離は嫌だと告げられるんじゃないかとビクビクしていると、彼女からこう告げられてしまった。


『ゴメン、庵くん……。私と別れて欲しいの。実は……寂しさのあまりに他の人と浮気しちゃったんだ』



———……★


「………は? はぁぁぁぁぁー⁉︎」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る