第77話
翌朝、気持ちよく起きたナーニョ。
「お酒を飲んだ次の日は頭が痛いと兄様は言っていたけれど、全然痛くないわ。私はお酒に強いのかもしれない」
なんだか朝から気分がいい。
「おはようございますナーニョ様。昨日はゆっくり休めたでしょうか?」
「神父様、お休みありがとうございます。しっかりと休めました」
「それは良かったです。今日は東の方面の討伐でしたね。無理をしないようにしてくださいね」
私は食事の後、騎士服に着替えて騎士団に向かった。いつものように合流し、討伐へ向かう。
毎日討伐しているおかげか少し魔獣は減ってきたように思う。このまま順調にいけばあと五日程度で次の街に向かうだろう。
毎日の討伐で私も魔獣にだいぶ慣れてきたわ。
最初見た時はやはり怖いと思った。
それは口には出さなかったけれど、必死に蓋をしていた恐怖心が溢れを出した。
でも……命をかけて戦っている騎士達を見て私も皆を守りたいと自分に出来る事を頑張った。
必死に魔法を使っている間に恐怖心に打ち勝つ事が出来たのだと思う。
そして怪我の治療の方は大方街の人達の治療は終わったようだ。
残念ながら欠損を治す時間はないのが現状。
欠損治療は出来なくても伯爵子息のような人達は優先的に治療に当たることになった。
欠損を治すまでの魔法は他の魔法に比べて魔力量はかなり違うのだ。寝たきりになっている人の数はかなり少なかったのもある。
治療が満足に出来ず殆どが亡くなってしまうからだ。
今日からは畑や井戸に魔法を順番に掛けていくことになっている。
「討伐お疲れさまでした。ではまた明日も宜しくお願いします」
いつものように治療魔法を騎士達に掛けた時、一台の馬車がナーニョ達の前で停まった。
「ナーニョ様、お迎えに上がりました」
「フォード伯爵子息様、ありがとうございます」
「ナーニョ様、ではまた明日」
「エサイアス様、また明日」
アンガストがナーニョの手を引いた時、エサイアスはナーニョに声を掛けた。
その様子を騎士達はヒヤヒヤしながら見守っている。
きっとナーニョ様はなーんにも気づいていないのだなと。騎士達は何も言わない、が、内心もどかしいのだろう。
ナーニョ様を見送った騎士達。そして騎士達が怯えるほど笑顔のエサイアス。
「さて、回復もした。お前達、これから訓練をはじめる!」
「鬼だ! 鬼がここにいるぞ!」
「誰が鬼だっ。さぁ、腕立て伏せ三百回から始め!」
彼が現れなければ訓練場を走って打ち合いだけで済んだのだろうなぁと騎士達は思ったのだった。
「ナーニョ様、ここからこの街の畑になっております。魔獣は現れないと思いますが気を付けて下さい」
「フォード子爵子息、ありがとうございます。では始めますね」
流石というべきか街をカバーするだけあって目の前に広がる畑は広大だ。
全てに魔法を行き渡らせるには何回も魔法を掛ける必要がありそうだ。
畑は魔獣の被害が及ばないように高い塀で囲われており、被害は出ていないようだ。
ここの街の畑はそこまで問題を抱えていないが、苗が病気に罹ると全滅するかもしれない。
その辺りを考えながら魔法を少しずつ掛けていく。
「今日はこの辺りで終わりにしますね」
「凄いですね。植物達がイキイキしている。奇跡だ。何度見ても見飽きない」
「ふふっ。奇跡は何度も起こりませんよ? それに私より妹の方がこの魔法を得意なんです」
「そうなんですね。もっと魔法の話が聞きたいです。我が家で食事でもしていきませんか?」
「ふふっ。嬉しいお誘いありがとうございます。ですが、神殿の方の治療も残っていますのでこのまま戻ります」
「そうですか。とっても残念です。明日も魔法の話を聞かせて下さいね!」
「えぇ、是非」
アンガストとまた馬車に乗り込み魔法の話をしながら神殿まで送って貰い、ここからは残った魔力で患者の治療を行っていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます