第68話 サイドストーリー解放
エサイアス様達は馬に乗り、私は荷物と共に馬車の移動となった。
総勢三百人の大移動。沿道には涙を流しながら手を振る人もいる。
この巡視はみな辛い旅だと知っているのだろう。
まず、エンカーナ地方をぐるりと周り魔物の数を減らしていくという話だ。
最初に目指す街はロダンの街。
そこに向かうまでの村は二つほどある。この二つ村は王都が近いだけあって何度も騎士団が訪れているので魔獣が出てくる事は殆どないようだ。
村に立ち寄り、私は村の井戸にターローの魔法を畑にはターローの魔法を掛けた。
魔法の効果は一年をみている。
来年は魔法使いが私の代わりに各村に魔法を掛けにこれたらいいなと願うばかりだ。
「ナーニョ様、村の者はとても喜んでおりました」
「私に出来ることがあって良かったです。次のロダンという街はどんな所なのですか?」
エサイアス様率いる騎士団の副団長シャローに聞いてみた。
「ロダンという街は人口一万人程度の街です。森と共存するような形の街で過ごしやすい街ですね。
ただ、森と共存するだけあって魔獣がたまに街にやってくるようです。
その度に街の住人が力を合わせて退治していると聞いています」
「森と共存って素敵ですね。どんな街か楽しみです」
馬車に乗り揺られること三日。
もちろんその間は野宿する。この野宿も安全に過ごせるようにヒュールトーロという範囲結界魔法が使われている。
本来は魔獣からの攻撃が防げるような結界なのだ。だが、魔獣の攻撃に耐えられるよう強固に作ると魔力も大幅に使われるのだが、薄い幕のような結界にしてあるためあまり魔力の消費はしない。
薄い幕でも結界は結界。
虫などの小さな生き物であれば防ぐ事が出来る。
魔獣が攻撃しようものならパリンと音を立てて割れてすぐに消えてしまうのだが、その音で騎士達も襲撃に気づきやすくなるのだ。
この結界は寝ていても発動が出来るように出発前はずっと練習をしていた。
最初の数日はやはり難しかったけれど、毎日の事になると慣れて今では意識せずに使う事が出来るまでになった。
今のところ結界を割るような魔獣は夜中に遭遇していないのでみんな睡眠をしっかり取れているようだ。
『お姉ちゃん、今日はどうだったの? 私はねー、サーローの指輪でふかふかになった畑に芋を植えていてたんだけど、もう芽が出てきてたの。サルンを使ったら一気に収穫出来そう! でもあれって無理に成長させるとあまり美味しくないって聞いた気がするんだけど、どうだったっけ?』
寝る前には必ず定期連絡のようにローニャから魔法で伝言鳥が飛んでくる。
最初はヒュールトーロの魔法を使いながらでは返事を返す事が出来ず日中の馬車で移動している時に使っていたが、最近では結界魔法を使いながらも返せるようになってきている。
『植物魔法は確かに多用すると味が落ちるって聞いたことがあるわ。今は食糧もギリギリだから味が落ちても収穫量を上げる方がいいかもしれないわね。
その辺は研究員に確認したほうがいいんじゃないかしら? 今夜は野宿三日目よ。明日には街に入るわ。どんな街か少し楽しみにしているの。みんな元気で過ごしているから大丈夫だと伝えておいてね』
私が寂しさを感じずに巡視が出来るのもこの魔法のおかげ。毎日ローニャの声が聞けるからだ。
どれだけ離れていてもこうして声を聞く事が出来るのでホッとする。
私はこうして内緒でおしゃべりをしているの。
巡視に同行している騎士達から村に着く毎に手紙を預かり、ファールの魔法を使ってローニャに送っている。
ローニャの方からも定期的に家族から預かり、手紙が私の元へ届くようになっている。
私達が居ない時の巡視はただただ心配を祈るしか出来なかったけれど、数日毎に定期連絡が行えるようになって騎士達からもその家族からも感謝されている。
こうして王都を出て半月ほどかけてようやくロダンの街に到着した。
「ここがロダンの街なのですね。シャローさんが言っていた通りの街ですね。凄く素敵だわ」
ナーニョが感動すら覚えるほどの街だった。
王都は人々が活気づいた街だったが、ロダンの街は街そのものが一枚の風景画のような感じだった。
緑豊かな街で樹と建物が共存していて人々は穏やかで静かに暮らしているという雰囲気だ。
私達は駐屯地に馬車を止めて騎士達は宿泊施設へと入っていく。
私はグリークス神官長の勧めもあってこの街の神殿にお世話になることになっている。
もちろんお世話になる以上、怪我人の治療もしっかり行う。
この街に数日滞在し、騎士達は毎日周辺で出没する魔獣を狩る。大方の魔獣を狩る事が出来たら次の街へ移動するようだ。
今回は英雄エサイアスが巡視だと知り、街の人は歓迎ムードで出迎えてくれた。
「ナーニョ様、明日、朝食後お迎えに上がります」
「分かりました」
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サイドストーリーは本編に繋がっていますが、読まなくても問題ないです。(*´ω`*)
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