第54話
「ナーニョ様、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
すれ違う人達は皆、私に挨拶をしていく。
医務室や騎士達の顔を覚えてきてはいるが、貴族は接する機会もないため、まだまだ駄目そうだ。
自分の部屋に戻ると、ローニャはベッドの上で本を読んでいた。
「ローニャ、痛みはどう?」
「うん、こうやってベッドにいたら痛くはないかな」
「良かったわ。心配したのよ」
「ごめんね、おねえちゃん」
「気にしなくていいの。それよりお父様達にお願いしないといけないわ。洋服がすぐに小さくなるからね」
「そうだね。今まで着ていた兄様達のお洋服もすぐに着れなくなりそうだよね。それより、お姉ちゃん、その髪飾りはどうしたの?」
「あぁ、これ? エサイアス様に貰ったの。可愛いわよね」
「お姉ちゃんに良く似合っているよ。私もケイルート兄様にお願いしようかな」
「良いと思うわ。兄様ならすぐに買ってくれそうね」
「だよね。あぁ、でも今の状態なら可愛い物だよね。
中身はおねえちゃんとそう変わらないはずなのにっ。成長してすぐに似合わなくなるのも嫌だから強請るのはもう少し成長してからの方がいいかなぁ」
「そうかもしれないわね。でも成長痛で良かった。怪我したかと思ったもの」
どうやらローニャは数日前から身体がむずむずとして違和感があったようだ。
ナーニョは妹の事がとても心配だったが、これはみんなが通るものだし、魔法で治療できないことを歯がゆく思った。
今はただ痛む時にさすってあげることしか出来ない。
そこから丸二日、ローニャはベッドで過ごした。食事も部屋で取ることになった。
心配した家族が部屋に来て少し話をした後また仕事に戻っていく。
ローニャがベッドで動けないでいる間、私は妹の分も頑張ろうと魔法を枯渇ギリギリまで使いながら治療に専念するわ。
ローニャが研究所に戻ったらまた治療が再開するはず。成長途中ではまだ魔力は不安定なため、治療は怪我をした騎士達だけになるように。
ナーニョはそれからもローニャに負担をかけさせまいと必死に聖騎士や平民達の治療を続けている。
グリークス神官長はというと、ナーニョが一人で神殿に来た時はとても心配していたが、いつものように治療をはじめると安心したようだ。
どうやら彼にとっては二人で一人という認識だったのかもしれない。
そして神官長の魔法はというと、彼は相当に努力をしたらしい。
何度も倒れながら魔法の練習を行い、ひと月掛からずに魔法を習得してみせたのだ。
大人である神官長の魔力量はナーニョ達の足元にも及ばないが、軽い治療程度なら日に二、三人は治療出来るようになっていた。
驚いた事に魔法の練習をしていたせいか少しだけ魔力が増えている気がする。
これは人間だから?
理由は分からない。けれど、治療するグリークス神官長はとても嬉しそうだった。
そしてナーニョがもっと驚いた事は神官長が指輪を使わずに魔法を使っていたことだ。
やはりそこは獣人と人間の違いなのだと思う。
だが、神官長はヒエロス以外は使えていないようだ。
話を聞いてみたのだが、一瞬光るだけで上手く使うことが出来なかったのだとか。
その理由はまだよく分かっていないけれど神官長は治療が出来るだけで十分だと話していた。
他の魔法は指輪が出来次第試すことになっている。
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