名付けるのであれば

 陳留に戻った曹昂は自分も出陣した宛県の戦いの際、用意した部隊の練兵を見ていた。


 管の部分にある点火口の中に火薬を雪ぎ、管の先に丸い弾を突っ込むと、点火口に火が付いた棒を差し入れた。


 その瞬間、大量の火花が散り、パンっという乾いた音を立てて弾が発射された。


 放たれた弾は置かれている的に当たり破壊した。


「練度は上々のようだな」


 火槍を持った兵の射撃訓練を見た曹昂は訓練を見ている刑螂に訊ねた。


「はっ。こういっては何ですが、宛県の戦いの経験により練度が上がったのだと思います」


 刑螂は宛県の戦いに参加していなかったが、始めた頃から訓練を見ていた為、装填などの速さなどが上がっているのが良く分かった。


「そうか。訓練を見ている者がそう言うのであれば、そうなのだろうな」


 頻繁に訓練を見る事が無い曹昂には分からない事なので、其処は見ている者の意見を参考にすべきだろうと思っていた。


 そして、次に騎兵の方を見た。


 馬を駆けさせながら、点火口に火が付いた棒を差し入れた。


 砲口には刀身部分が嵌め込まれているので、火薬の燃焼で生み出された推進力により、刀身が放たれた。


 放たれた刀身は的を破壊していった。


「騎兵の方の練度も問題ないようだな」


「はっ。その通りにございます」


 騎兵が的に当てて行くのを見た曹昂は問題ないなと思いながら言うと、刑螂も同意する様に頷いた。


「それは良かった。他に何かあるか?」


「ああ、それでしたら、一つ兵達からある報告が上がっております」


「ほぅ? どんな報告かな?」


 兵が上げるのだから、何か報告があるのだろうと思いながら訊ねる曹昂。


「そろそろ、自分達の部隊にも部隊名を付けて欲しいという報告が多いのです」


 刑螂がそう言うのを聞いて、曹昂は顎を撫でた。


「……そう言えばつけてなかった」


 仮称として石火矢隊とか特殊騎兵とか呼んでいたが、別段部隊名ではなかった。


 これを機に部隊名を付けるのも悪くないかと思う曹昂。


「…………父上の部隊には虎豹騎と虎士と虎の字を使っているから、こちらはそれを対なすという意味で竜騎兵団と名付けるか」


 曹昂が良い名前が無いかと考えて居ると、曹操の親衛隊を思い出した。


 二つの部隊は虎の字が入っているので、こちらは竜の字を入れた部隊名にしようと思い、この様な名称にしてみた。


「おお、良いですな。それで良いかと」


 刑螂は特に反対もしないでので、これで正式に部隊名が決まった。


 石火矢部隊こと竜騎兵団の訓練を見終えた曹昂は城へと戻った。


 内城に入ると、劉巴が慌てた様子で出迎えた。


「殿。丁度良い所にっ」


「劉巴。何かあったのかな?」


 冷静な劉巴が慌てているので、何事かと思いながら訊ねる曹昂。


「先程、許昌より早馬が参りましたっ。その者の報告によりますと、徐州に不穏の動きあり、何時でも兵を動かせるよう準備をせよとの通達が」


「そうか。いよいよか」


 劉巴の報告を来た曹昂は呂布が劉備に攻め込む準備をしていると察した。


(袁紹は幽州攻略でこちらに手が回らない。劉表も南部の反乱の鎮圧で手が回らない。問題は袁術だけど、今の所、呂布と同盟を結ぶ動きがないからな。どうなるかな?)


 同盟を結ぶだろうかと思いながら、一応兵を集めるように劉巴に指示をした。

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