決裂
数日後。
王允は自分の屋敷に呂布を招いた。
それは董卓暗殺の計画を教える為だ。
今ならば計画を話しても裏切られる心配はないと判断したからだ。
加えて陳宮を紹介する為でもある。
王允が陳宮と共に先に酒を飲み楽しんでいると、使用人が入って来た。
「申し上げます。今、呂布様が屋敷の門の前に来ました」
「うむ。お通ししろ」
使用人が一礼して部屋から出て行き、程なく使用人が呂布を連れてやって来た。
「王允殿。お呼びとの事で参りました」
呂布は王允に一礼すると、少し離れた席に座っている陳宮を見た。
「この方は?」
「わたしの友人で陳宮。字を公台という者です」
「お初にお目に掛かる。奉先殿の勇名はわたしの耳にも轟いております」
王允に紹介された陳宮は立ち上がり呂布に一礼する。
「ご丁寧に」
呂布も返礼すると用意された席に着いた。
使用人は呂布の盃に酒を注ぐと部屋から出て行った。
呂布は喉が渇いていたのか酒を直ぐに飲み干した。そして、お代わりを貰おうとしたら王允が声を掛けた。
喉が潤ったので、王允が話し出した。
「呂布殿。今日は貴殿に話したい事がありましてお呼びしました」
「話? それはどんな話でしょうかな?」
呂布はで王允が何を言うのか待っていると。
「呂布殿はこのままで宜しいのでしょうか?」
「……うん?」
王允の言葉の意味が分からないのか呂布は首を傾げた。
「貴方様には天下を制する武勇を持っているというに、何時までも董卓の言いなりになっていてはその武勇も存分に使えないでしょうに。惜しい事だ」
「それは……」
王允に言われた事が衝撃だったようで呂布は黙ってしまった。
言われた事が余程衝撃だったのだろう。王允が董卓の事を相国と言わず様付けしないで呼んだ事にも気付いていなかった。
更に陳宮も話に加わった。
「このままでは貴殿の武勇は董卓の良い様に使われて、最期には用済みとばかりに殺されるかもしれませんぞ」
「なっ、そんな事は・・・・・・」
そんな想像をした所為か思わず唾を飲み込む呂布。
「確かにそういう事も有り得るかも知れんな。何せ、あの董卓であるからな」
陳宮の言葉に王允が納得しながら呂布を見る。
このままでは自分は殺されると言う未来を想像したのか、顔を青ざめさせていた。
そんな呂布を見て王允達は笑みを浮かべる。
「そうならない為にする事は一つですな」
「うむ。だが、それは難しいであろうな」
「それは一体」
「董卓暗殺だ」
「うむ。董卓を暗殺すれば呂布殿の殺される未来は無くなり、貴殿は董卓を討った英雄として末代まで語られる大業を成した事になりましょう」
陳宮と王允が董卓の暗殺と口に出した事で呂布は此処に呼ばれた意味を察した。
「王允殿。陳宮殿。貴方方は」
「呂布殿。天下安寧の為にお力添えをして頂きたい」
話を聞いた呂布は少し迷ったが、すぐに決意は固まった。
呂布は腰に佩いている剣を抜いた。
王允達はどうなるのか呂布を注視した。
呂布は持っている剣で自分の腕を切った。
「これが誓約の証だ。この呂布奉先。貴方方の大望の力となりましょうっ」
「おお、呂布殿」
「素晴らしいご決断です。これで漢室は救われるでしょう」
王允と陳宮は呂布が計画に参加することに喜んだ。
そして、呂布の傷の治療をしながらどうやって董卓を暗殺するかを話し合った。
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