第3章86話:隠し通路

クリスタベルたちと離れて、洞窟内部を歩き始める。


魔族を一掃いっそうできたので、洞窟内部は安全のはずだ。


念のため、探知スキルを使ったが、人物や魔物の気配はなかった。


洞窟内の通路は、かれみちになっている部分も多い。


道がわからなくなりそうだが、俺には【マップスキル】があるので、一度通った場所は地図として記録できる。


――――目の前にマップを表示する。


現在、マップはフィールドを表示する『フィールドマップ』ではなく、ダンジョン内を表示する『ダンジョンマップ』になっていた。


そのダンジョンマップに、俺が通った道が随時、更新されていく。


ひととおり洞窟内を一周して、マップを埋めていくことにしよう。


「……」


しばらく無言で歩く。


俺の足音以外に、音はない。


静寂が洞窟内どうくつないを包んでいる。


ときどき、コウモリがバサバサと翼をはためかせながら、キーキーと鳴く声が聞こえるばかりだ。


歩く。


歩く。


歩く。


「思ったより広いな」


ぽつりとつぶやく。


そして数分ほど歩くと、気になる場所にたどり着く。


「ん……」


扉が設けられていた。


開けてみる。


中からは酒ののこがただよってきた。


そこは左右20メートルぐらいの空間であり、ベッドがあったりテーブルがあったり、明らかに居住スペースとおぼしき空間だ。


左の壁には旗が掛けられている。


その旗の下の地面には、いくつものガントレットが転がっていた。


(ガントレットか……。ここはおそらく、マルドルの部屋だな)


マルドルは徒手空拳の戦闘スタイルであり、ガントレットを装着していた。


このガントレットは、マルドルの装備品そうびひんだろう。


また、左奥ひだりおくの壁には、大量の袋が積み上げられ、装備やアイテムが詰められていた。


(結構レアなアイテムもある。戦利品せんりひんとして貰っていくか)


俺は、この部屋にあるものを根こそぎ回収していくことにした。


アイテムボックスに詰めていく。


あとでクリスタベルたちと山分やまわけすることにしよう。


「さて、こんなものか」


回収作業かいしゅうさぎょうが終わったので、俺は部屋を立ち去った。


マップを見ながら、帰路につく。


そのときだった。


「ん……」


帰り道。


そこに気になるものが、マップに表示されていた。


紫色のマークだ。


ダンジョンマップで紫マークが表示された場合、隠し通路があるということ。


とりあえずマークが表示されている場所に行ってみることにした。


「ここか」


たどりつく。


周囲を見渡すが何もない。


ただ通路が続いているだけだ。


俺は周囲の壁を、手の甲でコンコンとノックしてみることにした。


すると。


(ここの壁……魔法陣が埋め込まれてる)


ということに気づいた。


魔法陣によって、道が閉ざされているのだ。


ここが隠し通路の入り口か。


「……」


こういう隠し通路を発見したときは、どうしても心が躍る。


いったい先には何があるのだろうか?


俺はさっそく、隠し通路の入り口を閉ざしている、魔法陣を解除することにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る