第3章85話:討伐後

俺は、このあとどうするかを考える。


マルドルを生け捕りにして情報を吐かせるか……?


(いや……)


このレベルの相手を捕縛ほばくし続けることは難しいだろう。


錬金術で作れるアイテムには、上級モンスターを拘束するものもあるが……


必要素材が足りておらず、現在は作れない。


諦めるしかないだろう。


(殺すか)


俺はそう決意した。


マルドルが毒にあらがうかのように、よろめきながら立ち上がる。


そして呪詛じゅそを吐いてきた。


「貴様、絶対ぶっ殺して―――――」


そんなマルドルに俺は、持ち前の敏捷性びんしょうせいを活かして、高速で接近する。


ミスリル製のソードを取り出して、マルドルの胸に突き刺した。


「ぐふっ!!?」


致命傷ちめいしょうだ。


しかし異世界では、ここから復活してくることも有り得る。


だから完全に死なせるために、次の斬撃で、俺はマルドルの首を切り落とした。


「ふう……」


マルドルを討伐し終えて、ひと息つく。


振り返って、クリスタベルたちのほうを向いた。


クリスタベルとケイノンは立ち上がって、俺のほうを見ていた。


俺は近づく。


すると、クリスタベルがいきなり謝罪してきた。


「何にも役に立てなくて、ごめんなさい」


クリスタベルが続けて言った。


「あなたがいなければ、あたしはマルドルに殺されていたかもしれない。それにしても、あんな相手に一人で勝つなんて、あなたの戦闘能力といい、錬金術といい……本当に一級品ね」


と賞賛してきた。


錬金術が褒められるの悪い気分じゃない。


俺は言った。


「ありがとう。……それより、怪我は大丈夫なのか?」


「……ええ。回復薬を塗り込んだから、応急処置は済んでるわ。まだ結構痛むけどね」


クリスタベルは貫かれた腹を押さえながら、そう答えた。


俺はケイノンに視線を移す。


たしかケイノンはふくらはぎを突起で刺されていたが……


「私も応急処置は済ませました」


とケイオンは言った。


彼は両足で立てているが、まだ痛みが走るのだろう、右足に断続的な痙攣を起こしていた。


「そうか。これから洞窟内部を探索したいと思っているんだが……お前たちはどうする?」


と俺は尋ねた。


クリスタベルが答える。


「探索は……あなたに任せてもいいかしら。今はこの傷の回復に専念したいわ」


「私もできれば、もう少し休みたいです。歩行するのは、まだちょっと無理かもしれません」


とケイノンも告げた。


「じゃあ、俺ひとりで言ってくる。ここで待っていてくれ」


そう俺が告げると、二人はうなずいた。


というわけで、マルドルの死体を回収してから、俺は洞窟内の探索を開始する。






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