第3章81話:地下通路

「とにかく、怖いなら俺たちについてくるといい。あんた一人の護衛ぐらい、難なく務まるからな」


「それはありがたいことですが……本当に魔族のもとへ向かうんですか?」


「当然よ。そのつもりでここに来たからね」


とクリスタベルが答えた。


しかしケイノンが不安な面持おももちで告げる。


「……正直、このまま引き返したほうがいいと思います」


「なんでだ?」


「ここを支配している魔族は、極めて強力です。私もひとかどの戦士ですからわかりますが……あの魔族には、手も足も出ませんでした」


あの魔族……とは、おそらくマルドルのことを言っているのだろう。


ゼルリウスぐらい強い魔族だとしたら、手強てごわいのは間違いない。


「だとしたら、そういう危険な魔族は、なおさら退治しておかなくちゃいけないでしょ」


とクリスタベルが言った。


ケイノンが不安げにその言葉を聞いている。


俺は告げる。


「安心しろ。こちらも魔族を討つための戦力を用意している」


「……わかりました。あなたがたには、魔族を討つべき目的があるのですね。だったら、これ以上は何も言いません。私も、あなたがたのお力を信じましょう」


そう告げたケイノンは、さらに続けた。


「私も【剣士職】の戦士ですので、できるかぎりお二人と一緒に戦いたいと思います。私にできることがあれば、なんでもおっしゃってください」


「ああ。……でもまあ、無理はするな」


ケイノンの意気込いきごみは買うが、今日まで彼は牢屋に捕まっていた。


衰弱すいじゃくしているだろうし、無理をされるぐらいなら、後ろで見ていてもらったほうがラクだ。





さて、ケイノンを連れて、俺たちは移動を開始する。


地下牢の廊下を戻り、階段までやってきた。


さきほどスルーしてきた地下扉の前に立つ。


おそらく、この扉から、魔族のいる崖の洞窟内部どうくつないぶへ行くことができる。


「いきましょ」


とクリスタベルが言った。


俺は扉を開ける。


扉の向こうの様子を確認する。


さらに地下へと続く階段があった。


俺たちは階段を下りる。


階段を下りた先は直線の通路になっていた。


どうやらケイノンも【夜目】を持っているらしく、ランタンなどは使わないで進む。


俺はここで【探知】を使う。


――――地下通路をしばらく歩いていったところに、魔物らしき存在が2体いる。


ということが、【探知】でわかった。


クリスタベルとケイノンに、この情報を共有しておくことにした。


「この地下通路の奥に2体ほど、何かいる。おそらく魔物だろう」


「……なんでそんなことがわかるのよ?」


「俺は【探知】スキルが使えるんだ。一定範囲内にいる人や魔物の存在を把握できる」


「た、探知スキルって……」


クリスタベルが困惑を示した。


実際に歩いていくと、魔物が2体現れる。


ツボミを持った植物系の魔物だ。


俺はそれをショートソードで切り裂く。


「すごいですね……探知スキルなんて、ちょっとした伝説のスキルですよ。冒険者や探検家としては、喉から手が出るほど欲しいスキルです」


とケイノンが告げた。

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