第3章78話:階段

「それじゃあいくか」


言いつつ俺は、そっと出口の扉を開けた。


廊下の様子を確認する。


廊下の左は壁になっている。


右に行くしかないが、魔物が一匹いた。


クラゲの魔物――――アーノシタルだ。


「あたしが処理するわ」


とクリスタベルが告げる。


しかし廊下はさほど広くない。


槍を振るには不向きだと思うが……


だが、そのとき、クリスタベルが槍になんらかの魔力を送り込んだ。


すると槍の長さが変わる。


ショートソードぐらいの長さの、短い槍になった。


その短槍たんそうを持って、クラゲの魔物に近づくクリスタベル。


(槍の長さが変わるのか)


【飛竜族の槍】にそんな仕様があるとは知らなかった。


まだまだ俺の知らないことも多いな。


「……!」


クリスタベルが床を小さく蹴る。


素早くアーノシタルに接近して、一閃いっせん


アーノシタルを斜めに切り裂いて、楽々と撃破する。


「見事な槍さばきだな」


「ありがと」


倒したアーノシタルを、クリスタベルがアイテムバッグに回収する。


俺たちは廊下を進む。


「しかし、地下牢ちかろうの場所がわからないな。手当たり次第に部屋を巡っていくしかないのか」


だが、しらみつぶしに探すと魔物と何度も交戦しなければいけないし、魔族に見つかるかもしれない。


と、そのときクリスタベルは言った。


「うーん……たぶんこっちの道で合ってると思うけど」


「そうなのか?」


「ええ。砦にはいろいろな様式があるけど、見取みとが似ているものも多いのよ。ロムズ砦と似たような砦を、以前に見たことがあるわ」


なるほど……


なら、クリスタベルに先導を任せたほうがいいかもしれないな。


廊下を歩き続ける。


途中、魔物はところどころに見かけたが、魔族の姿はなかった。


ちなみに魔物については、声をあげられたりする前に、素早く即殺そくさつする。


戦わなくて良さそうな魔物や、集団でたむろしている魔物には手を出さないようにした。


そして……数分後。


俺たちはいよいよ地下への階段を発見する。


「暗いわね」


とクリスタベルが、階段を見下ろしながらつぶやいた。


「あたしは夜目スキルがあるけど……あなたは大丈夫かしら?」


「俺も夜目があるから大丈夫だ」


「へえ、そうなの。まあでも、なんとなくそうだと思ってたわ」


まあ、お互い【夜目】を使っていることは察していた。


「じゃあ、ランタンも松明たいまつも要らないわね」


クリスタベルが告げて、俺はうなずいた。


「このまま進もう」


俺たちは地下への階段を降り始めた。




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