第3章77話:錬成

廃砦はいとりでの執務室に侵入した俺たち。


部屋は明るくはない。


しかし窓から射しこむ月明つきあかりのおかげで、いくらか暗さはマシになっているようだ。


一応、俺は【夜目】スキルを使っておく。


執務室は古めかしく、ほこりっぽい。


長く使われていない部屋のようだ。


「出口はそこね」


クリスタベルが、部屋の扉を示唆しさする。


「部屋を出る前に、ここでちょっと錬金術をしていいか?」


と俺は尋ねた。


砦や洞窟を攻略するための武具を作りたいと思ったからだ。


するとクリスタベルが抗議した。


「は? いいわけないでしょ。錬金術なんかしてたら、夜が明けちゃうわよ」


「いいや。すぐに終わる」


と俺は言ってから、錬金術に取り掛かることにした。


執務室のテーブルを、錬金台れんきんだいとして使おうと思ったので、まずはテーブルの上のほこりを払う。


ちょうどテーブルのうえに月明かりが射している。


俺はその月明かりの中に、アイテムバッグから素材を取り出した。


錬成をおこなう。


作るのは【ウォーターランスの杖】だ。


水のランスを相手に放つ魔法――――ウォーターランスを発生させる杖。


ウォーターランスという魔法は中級以上の魔法なので、本来、俺は使用できない。


しかし【ウォーターランスの杖】があれば、俺でもウォーターランスを行使することができるのだ。


素材は、


水魔石x5


氷水晶x2


マキドナの氷爪x1


魔法杖x1


鋼槍x1


……以上である。


これらをテーブルのうえに置いて、錬成を開始。


【即時錬成】により、一瞬で完成品かんせいひんができあがる。


「なっ……!?」


錬成の様子を見守っていたクリスタベルが、驚愕の声を上げる。


「あなた、なんて速度で錬成してるのよ!?」


「これが俺の特技だ」


と俺は応じた。


さて、他の道具も作る。


目くらましができる【煙幕】。


魔族だけに有効な毒霧を出す毒袋【げきどくぶくろ】。


麻痺の範囲攻撃を出す【きょう麻痺まひづえ】。


攻撃力を向上させられる【攻撃バフポーション】。


防御力を向上させられる【防御バフポーション】。


速度を向上させられる【敏捷バフポーション】。


攻撃バフポーション、防御バフポーション、敏捷バフポーションは、もう今のうちに飲んでおく。


クリスタベルが驚きつつ、告げた。


「あなた……実はかなりすごい錬金術師なんじゃないの? もしかして有名人だったりする?」


「いや、有名じゃないぞ」


と俺は応じる。


さて、必要そうなものを錬成し終えた。


「こんなもんか。……待たせたな」


「いいえ。見てて面白かったわ」


とクリスタベルが応じる。

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