第3章75話:到着

森を歩きながら、俺たちは魔族に関する情報を共有することにした。


クリスタベルによると、この森の先にいる魔族は、マルドルという名前らしい。


魔族領主であるダフローネの手下だという。


戦闘スタイルとしては、徒手空拳としゅくうけんをはじめとした打撃が主体だそうだ。


(打撃か……魔法より近接が得意ということか)


だとすれば、こちらは逆に、魔法や銃などの遠距離攻撃のほうが戦いやすいだろう。


しかし、洞窟内どうくつないで戦うなら、遠距離攻撃は使いにくいかもしれない。


銃などは跳弾ちょうだんの恐れがある。


洞窟専用の武器を製作する必要があるだろう。




なお俺からは、ノルディンの語った情報を、クリスタベルにも伝えた。


「ふーん。砦はブラフで、その裏にある崖の洞窟がアジトなのね」


とクリスタベル。


「ああ、どうやらそのようだ」


「その情報は助かるわ。うっかり騙されて、普通に砦を攻めるところだったから」


「……まあでも、敵から教わった情報だからな。砦がブラフという情報―――それ自体がブラフかもしれんことは、念頭に置いておかなければいけない」


ノルディンが真実を語ったとは限らない。


素直に情報を吐いたと見せかけて、ウソの情報を語った可能性は十分にある。


「あなた、結構慎重なタイプなのね。でもそれぐらいのほうが、味方としては信頼できるわ」


とクリスタベルは微笑んだ。





二人で森を歩く。


数分後、目的地とおぼしき廃砦はいとりでにたどりついた。


「あれがロムズとりでか」


俺たちは森の中から、砦の様子をうかがう。


森の中にひっそりとたたずむ砦。


日が落ちて、昇り始めた月明つきあかりが、砦を照らしている。


砦の石壁いしかべは苔むしており、ツタや、つる草が絡みついていた。


周囲には誰もいない。


魔物の姿もない。


しかし、砦の中には魔物の気配があった。


クリスタベルが告げた。


「魔族のアジトである崖……というのは、アレのことね」


クリスタベルの視線の先にあるのは、非常に高くそびえたつ岩壁だ。


砦の3倍ほどの高さがある。


「さっそくいきましょう」


とクリスタベルが言った。

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