第3章74話:槍戦士

「あなた、あんな武器を使っているぐらいだし、適性職は【狙撃手そげきしゅ】ってところかしら」


あんな武器……とは拳銃のことだろう。


飛び道具である拳銃を扱っていることから、俺の職業が【狙撃手】だと推定したのだろう。


しかしもちろん、俺は狙撃手ではない。


「いや、錬金術師だ」


と俺は答えた。


「……錬金術師? でもあなた、強力な遠距離武器えんきょりぶきを使ってたじゃない?」


とクリスタベルが首をかしげる。


俺は説明した。


「この武器……拳銃というんだが、これは俺が錬金術で製作したものだ」


「ふむ……」


とクリスタベルが納得しかけたが、慌てて聞いてきた。


「でも、あなた、あたしの攻撃を結構避けてたでしょ。錬金術師にあんな動きが出来ると思わないけど……?」


「知らないかもしれないが、実は錬金術師ってのは、敏捷びんしょうステータスが高いんだ。攻撃力や防御力はいまいちだが、スピードは他の職業より速い」


「へえ……そうなの」


とクリスタベルは納得したようにあいづちを打った。


俺は言った。


「そういうあんたの適性職てきせいしょくは、順当に【戦士】だな」


「ええ。正確にいえば【槍戦士やりせんし】よ」


槍戦士は、槍に特化した戦士職せんししょく


普通の戦士に比べて、槍しか伸びにくい欠点があるものの、槍の適性だけなら初期状態でAランク。


最終的にはSランクにも伸びることもある。


ゲームにおいて、槍ビルドでやっていきたいプレイヤーは【槍戦士】一択であった。


「あんたは飛竜族ひりゅうぞくなのか?」


と俺は尋ねた。


クリスタベルは目を見開きつつ、聞いてくる。


「……どうしてわかったの?」


「その槍……【飛竜族の槍】だろ」


【飛竜族の槍】は、飛竜族に伝わる槍武器やりぶきである。


槍としての強さはまあまあという感じだが、適性職【槍戦士】の人間が使えば、非常に強力な武器となる。


飛竜族の人間が使った場合に限り、竜の加護である【竜攻りゅうこう】を発動することができるからだ。


これは使用者の攻撃力を飛躍的に上昇させる加護である。


「ご名答よ。飛竜族に伝わる槍を知っているなんて、あなた、相当そうとう物知ものしりなのね」


「……いいや。たまたま知っていただけだ」


謙遜けんそんではない。


博識はくしきだと思われてしまっても困るからな。


クリスタベルは言った。


「まあ、自己紹介も済んだことだし、ひとまず歩きましょうか。ちなみに、あなたの目的地は、この先にある砦かしら?」


「その通りだ」


「じゃあ、あたしと同じね。行きましょう」


とクリスタベルは告げてから歩みをはじめた。


俺もクリスタベルの後に続いて歩き出す。



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