第3章73話:女戦士の素性

「……ッ!」


一方、女戦士のほうも、俺の首へと槍を向けていた。


槍の穂先ほさきが俺の首筋をでている。


お互いの動きが止まる。


女戦士は静かに告げた。


「あたしの勝ちね」


「……本当にそう思うか?」


俺は拳銃のがねいた。


バァンッ!!


耳をつんざくような音とともに、銃弾が発射される。


その銃弾は威嚇射撃いかくしゃげきのようなもの。


ゆえに女戦士にはヒットせず、彼女の頬を通り過ぎて背後の樹木じゅもく着弾ちゃくだんする。


俺は言った。


「その槍が俺の首をハネるより、拳銃こいつが火をくほうが早い」


いまの射撃で、女戦士も拳銃の性能を理解しただろう。


「……」


女戦士は強い警戒をにじませた。


俺は思う。


(こいつは本当に敵なのか……?)


違和感を覚えた。


さきほどからずっと、女戦士の槍攻撃やりこうげきは、俺の急所を絶妙に避けていると気づいたからだ。


つまり、この女戦士は俺を殺そうとしていないのだ。


……まあ、俺をりにしたいだけかもしれないが。


そのとき女戦士が尋ねてきた。


「あなた……ここに何しに来たの?」


さらに聞いてくる。


「あなたは魔族の味方なの?」


と女が尋ねてくる。


「いや、違う」


「……」


「あんたはどうなんだ? 魔族の味方なのか?」


「味方なわけないでしょ。あたしは、魔族を狩る側よ」


……!


魔族を狩る側……


もしかして、こいつは……


「あんた、クリスタベルって名前だったりしないか?」


「……! なぜあたしの名前を?」


と女戦士はさらに強い警戒で、俺のことを見つめてきた。


俺は答える。


「精霊エストーリア様から、あんたの名前を聞いたんだよ」


「え? エストーリア様から?」


「ああ。あんたと協力して、魔族の領主を倒せって依頼を受けたんだ」


俺は拳銃を下ろした。


女戦士―――クリスタベルも、槍を引いた。


俺は告げる。


「まずは自己紹介をしよう。俺はフロドだ」


「クリスタベルよ」


と、まずは互いに名乗った。


「いきなり斬りかかったことは謝るわ。魔族の仲間かと思ったの」


「気にするな。あんた、急所は避けていただろ」


「あら、気づいていたのね」


とクリスタベル。


さらに納得したようにクリスタベルが告げた。


「……ふうん、なるほど。あなたがあたしの相方バディってわけ。確かに味方にすれば役に立ちそうね」


「あんたもな」


と俺は答える。


クリスタベルは強い。


戦士ギルドでも、ここまで槍の扱いにけた者は見たことがない。


レベルもかなり高いだろうし、魔族をともに狩る仲間として、もうぶんないだろう。

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