第3章56話:馬車の旅路

―――第3章―――



幌馬車ほろばしゃ小刻きざみに揺れながら街道を進む。


幌の中には樽や木箱きばこなど、積荷つみにが置かれている。


俺とメリーユは、積荷つみにたちに囲まれながら座り込む。


村人たちとの、別れの余韻よいんが胸に残っていた。


が、それもやがて落ち着いてくる。


メリーユが言ってきた。


「街までは2日ほどで到着するわ」


俺は尋ねる。


「了解だ。……エルクスの街ってどんなところなんだ?」


「特にわりえのしない街よ。さすがにユレット村よりは色んな施設があるけどね」


「まあ、そうだろうな」


市場いちばがあるから色んなものが手に入るわ。あと冒険者ギルドもあるけど……フロドさんは冒険者じゃなかったかしら?」


「ああ、冒険者じゃない。ただの旅人だ」


「そうなの。フロドさんなら、すぐに高ランクになれると思うわよ」


「うーん……」


冒険者か……。


なるつもりは全然なかったな。


しかし、どうせ今後も魔物を倒して、素材を売る生活が続くだろう。


だったら冒険者になったほうがお得かもしれない。


魔物を倒すついでに討伐依頼とうばついらいを受けておけば、報酬も入るだろうしな。


「ちょっと検討しておくか」


「それがいいと思うわ」


しばらくメリーユさんと雑談にふける。


6時間ほど経過する。


さすがにこれぐらい馬車に乗っていると疲れてきた。


特に、ずっと座っているのがキツイ。


馬車ってすわ心地ごこちが良くないんだよな……。


対策を考える。


すぐにひらめいた。


クッションを作ればいいのだ。


というわけで【素材参照】をして。


素材を並べる。


「錬成!」


座布団ざぶとんを製作。


さっそく下にいて座ってみる。


おお……。


これはラクだ。


「メリーユさんもどうぞ」


「ありがとう……?」


もう一つクッションを作って、差し出した。


メリーユが下に敷いて座る。


「あ……これ、すごい」


と、メリーユが感嘆した。


俺は微笑んで告げる。


「ラクだろ」


「ええ。ありがたい道具ね。でもこれに慣れると、馬車に乗れなくなりそう」


「ははは。それは有り得るかもしれんな」


ただメリーユはクッションを気に入ったのか、ずっと敷いて座り続けていた。





ガタゴト。


ガタゴト。


馬車に揺られながら進んでいく。


幌馬車ほろばしゃの中は薄暗うすぐらい。


そして暇だ。


雑談しかすることがない。


メリーユさんと他愛たわいない話を続ける。


それから数時間後。


ふと馬車が止まった。


馬がいななく声をあげている。


何かあったのだろうか?


「魔物だよ!」


ネリーが叫んできた。


俺とメリーユが顔色を変える。

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