第2章50話:お礼

裏庭に行く。


俺はアイテムボックスから、ランドウルフ・マザーを取り出した。


10メートルの巨体を持ったマザー。


その死体が横たえられる。


「これは……すごいわね」


とメリーユは感心した。


さらにメリーユは告げる。


「よくこんな巨大な魔物を倒せたわね。マザー種のことはよく知らないけど、普通のランドウルフより何倍も強いんじゃないの?」


「まあな」


と俺は答えつつ、言った。


「村の周辺にいたランドウルフも、あらかた片付けておいた。しばらくは村がランドウルフに襲われることはなくなるだろう」


メリーユが微笑みを浮かべた。


「本当にありがとう。さっそく、このことを村人に知らせてきましょう。それから、フロドさん。あと三日ほど村に滞在してもらえないかしら?」


「え? それはまあ、大丈夫だが……何かあるのか?」


「三日後の夜にうたげを開こうと思ってね。フロドさんにも参加してほしいのよ」


「俺がか?」


きょとんとすると、メリーユが返す。


「なにきょとんとしてるの。ランドウルフ討伐の祝宴しゅくえんなんだから、あなたが主役よ」


ふむ。


なるほど。


ランドウルフの問題が解決したことをしゅくして、宴を開くわけか。


「主役といっても、フロドさんは別に何もしなくていいわよ。ただ、好きなだけ飲んで、食べていってくれたらね」


「……そうか。わかった。じゃあ参加させてもらうことにするよ」


「決まりね」


メリーユは微笑んでから、


「あ、フロドさんへのお礼も兼ねた宴だから、準備も手伝っちゃダメだからね」


と釘を刺してきた。


かくして三日後、村でランドウルフ討伐を祝う酒宴しゅえんが開かれることになった。









ランドウルフ討伐の報告はその日のうちにユレット村を駆け巡った。


そして祝いの宴が開かれることもまた、知れ渡った。


翌日から村人は宴の準備に取りかかる。


そのあいだ俺は、村長宅そんちょうたくの個室にこもって、ガンドからもらった地図や資料を読んでいた。


と同時に。


村人からひっきりなしにお礼の挨拶が舞い込んだので、その応対おうたいをおこなった。


さらに村人からお礼のおくものとして、工芸品こうげいひんやら、包丁やら、織物おりものなど、さまざまなものを貰った。


感謝されるのは嬉しいことだ。


底辺の錬金術師をやっていたころは、ほとんど感謝されたことなんてなかったからな。


俺は満たされた気持ちになった。


そうしているうちに3日が経ち……


いよいよ宴の夜になった。



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