第2章31話:牢屋へ

ここで無理をするより、捕まってチャンスをうかがったほうが、たぶん勝算が高い。


だから。


(よし、捕まろう)


俺は覚悟を決めることにした。


「……!」


ジェーンがる。


俺はジェーンに向かって発砲した。


だが、わざと外す。


わざとらしく捕まるのではなく、抵抗したうえで捕まったというフリをするためだ。


俺が銃弾を外したと思ったジェーンは、にやりと笑い、間合まあいをめてきた。


俺のあごに拳を叩き込んでくる。


「がっ!?」


あごを殴られた俺。


脳震盪のうしんとうで、視界がぐるんと暗転あんてんした。


昏倒こんとうする。


「あっけないものね」


とジェーンが冷ややかな笑みで、俺を見下みおろしていた。


せいぜい笑ってろ……


必ずぶち殺してやるからな。


そう思いながら、俺は意識を手放てばなし、暗闇へと落ちていった。





やがて。


「ん……」


俺は目を覚ます。


見慣れない石造いしづくりの天井。


俺は上体を起こした。


「ここは……」


俺は周囲の状況を確認する。


暗い。


俺はスキル【夜目やめ】を使った。


視界が一気に見えるようになる。


「……ふむ、なるほどな」


すぐにこの場所がなんなのか、わかった。


――――ここは、牢屋だ。


おそらく地下牢ちかろう


俺はろうの中のベッドのうえで眠っていたらしい。


「……そうか。俺はココに運ばれてきたのか」


直前の記憶を思い出す。


ジェーンにぶん殴られて気絶し、どこかの牢屋へとぶちこまれた。


いったいどこの牢屋なのか?


さすがに、街の牢屋ではないだろう。


ゼルリウスのアジトや砦……あるいは、それに類する場所だろうか。


(……ほこりっぽいな)


と感じる。


古びた匂い。


さびれた空気。


見ると、床には埃が積もっていた。


長年ながねん使われておらず、手入れもされていない牢……


(廃墟かもしれないな)


などと推測する。


俺は立ち上がった。


とりあえずおりに近づいてみる。


檻の一本をつかむ。


びくともしない。


コンコン、と叩いてみる。


頑丈だ。


それに鉄の質感じゃない。


壊されないように、特殊な素材で作っているのかもしれない。








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