第2章24話:依頼

まず、ユレット村の周辺に存在する街や村について教えてもらった。


ユレット村を含めて、この近くに村が10以上も点在てんざいする。


そして、そんな村々むらむらの中心に位置するように、1つの街が存在しているらしい。


ちなみに街の名前は【エルクス】。


この一帯いったい中心地ちゅうしんちであり、村で作られた作物さくもつ畜産物ちくさんぶつが持ち寄られているのだとか。


リュクスンが説明する。


「自分たちもよくエルクスの商人をまねいて、物を売ってもらったりしています。売ってもらう、といっても、たいていは物々交換ぶつぶつこうかんですが」


つまり、街と村は物資のやり取りをしながら、共存しているわけだ。


ガンドが補足する。


「ちなみにエルクスの街は、このリズベックりょうの中心地でもあるぞ」


情報を脳裏のうりに刻む。


ゲームで得た知識もあれば、そうじゃない知識もある。


丁寧に頭の中にインプットしていく。


俺は問う。


りょう中心地ちゅうしんちということは、最も大きな街、ということか?」


ネリーが答えた。


「そうだよ。ただ大きいといっても、人口は7000人ぐらいだけどね」


「7000人……」


7000人というのは、街の人口としては平均的だ。


しかし領の中心地としては、少ないといえるだろう。


たとえば一般的の領都りょうとなら2~5万人。


国の中心である王都だったら10万人を超えることも珍しくない。


そのときリュクスンが尋ねてくる。


「フロドさんは、旅人なんですよね?」


「ん、ああ。そうだが」


「このあと、街に行かれる予定でもあるんですか?」


「そのつもりだな。この村をったら、そのエルクスの街に向かうことになるだろう」


いつまでもユレット村に滞在するわけではない。


長くて一週間ぐらいの滞在になるだろう。


それが終わったら、次の目的地はエルクスとなる。


「それは危険かと思います」


しかしリュクスンはそう言ってきた。


「今はランドウルフの群れがいます。ガンドも重傷じゅうしょうを負わされましたし……街から討伐隊とうばつたいが出るまで、じっとしているべきでしょう」


ふむ……。


まあ、そう忠告するよな。


でも銃火器じゅうかきがあれば、ランドウルフぐらい楽勝で倒せる。


俺は言った。


「俺はランドウルフの群れも倒したことがある。だから問題ない」


するとメリーユが言った。


「フロドさんは、あれだけの魔物肉まものにくを確保できるぐらいだから、相当の手練てだれなのよね」


「いや……どうかな」


前世の記憶を取り戻したぶんだけ、いくらか強くはなったが……手練れとまではいえないと思う。


そのときメリーユが真剣そうな声で言ってきた。


「フロドさん。ってお願いしたいことがあるのだけど、いいかしら?」


「なんだ?」


俺は尋ねる。


「あなたにランドウルフの群れの討伐を依頼したいわ」


ふむ……


俺としては、意外な話ではなかった。


どのみちランドウルフは討伐するつもりだった。


ランドウルフを放置して、この村が壊滅するようなことがあったら、寝ざめが悪いだろうしな。


「全滅させるのは無理でも、数を減らしてもらいたいの。街道周辺かいどうしゅうへんあたりにいるランドウルフなどは特に」


街道付近かいどうふきんにランドウルフがいると、村から街への移動が難しくなる。


だから街道の安全を確保してほしいのだとメリーユは説明する。


ランドウルフの討伐依頼。


メリーユは言ってくる。


「引き受けてもらえないかしら?」


「ああ。構わないぞ」


俺はそう答えた。


メリーユの顔に安堵あんどいろが広がった。

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