第2章22話:ジェーン視点3

ジェーンは尋ねた。


「あなたがランドウルフをやしたがっている理由を、まだ知らないんだけど……そろそろ教えてもらえないかしら?」


「いいや。それを言うつもりはない」


とゼルリウスは拒否した。


「知る必要のないことだ。お前はただ、仕事だけしていればいい」


「……」


ジェーンはわずかに不満そうな顔をしたが、すぐに、


「……わかったわよ」


と告げた。


ここで食い下がっても、ゼルリウスの機嫌きげんが悪くなるだけだ。


そう判断したジェーンは、あっさりと引き下がる。


ジェーンは話を戻すように尋ねた。


「で? ランドウルフ・マザーを追加でばらまくんだっけ?」


「ああ……いま放流してるのは2頭だけだからな。追加で、7頭ほど放流する」


「7頭……」


たった2頭でもユレット村が甚大じんだいな被害を受けているほどだ。


もし7頭もランドウルフ・マザーが増えたら、どうなるか。


いまとは比べ物にならないほどの被害が出ることは、容易に想像できた。


ゼルリウスは言った。


「今回は、お前にも手伝ってもらう。これを受け取れ」


ゼルリウスはアイテムバッグから、黄色く光る石を3つ手渡してきた。


ジェーンは尋ねる。


「これは?」


召喚石しょうかんせきだ」


「召喚石……」


召喚石とは、魔物を召喚することができる石だ。


ゼルリウスが説明する。


「ランドウルフ・マザーの召喚石だ。石に魔力を送り込めば、ランドウルフ・マザーを召喚することができる」


「……なるほどね。これを使って、ランドウルフ・マザーを放流しろと」


「そういうことだ」


とゼルリウスは肯定する。


理解したジェーンは、召喚石をアイテムバッグへ収納した。


ゼルリウスは以下のように補足する。


「ランドウルフ・マザーを召喚するときは、まとめていっぺんに召喚するのではなく、1体1体、距離を開けたうえで召喚しろ。互いの距離が近いと、マザー同士で縄張なわばあらそいをはじめかねないからな」


「了解」


「よし。じゃあ、頼んだぞ」


話が終わる。


ジェーンはきびすを返し、森をあとにするのだった。

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