第2章19話:思惑
困っていると、メリーユが手を叩いた。
「はいはい。みんな、フロドさんが困ってるでしょ? ちょっと彼と話があるから、お礼を言ったりするのは後にしてね」
メリーユの
さすが村長だ。
「メリーユさん、ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして。でも、私もみんなと気持ちは一緒なのよ? 錬金術は、私もそれなりに知ってるつもりだけど……あなたのは、
ふむ……。
さすがに上級ポーションを一瞬で錬成するのはやりすぎたか。
メリーユが俺の内心を察して、尋ねてくる。
「あなたの錬金術については、あまり詳しくは聞かないほうがいいのかしら?」
「そう……だな。一連の出来事については忘れてもらえると嬉しい」
「忘れるのはさすがに無理だけど、まあ、
「お礼は別に……俺が勝手にやったことだからな」
「それじゃこっちが納得できないわ。ガンドも納得しないでしょうね」
「うーん」
ほんとに礼なんて要らないんだけどなぁ。
あ、そうだ。
「ならお願いしたいことがあるな。それを聞いてもらうことを、礼にしてくれ」
「ふむ……何かしら?」
俺は、メリーユに述べる。
お礼として要求したのは――――情報である。
この周辺の地理。
出現する魔物。
地図が欲しいから、それを譲っていただきたいと。
できればラティナ王国についてわかる資料があれば、それも欲しいと告げた。
「なるほど。ちょうどそういうのはガンドやネリーが詳しいわ」
「そうなのか?」
「彼らは街との
ガンドやネリーは、よく村を離れることがあるため、村の外の情報には
地図や資料は当然、所有しているとか。
「あとで本人たちに伝えておくわ」
「よろしく頼む」
こうしてお礼の内容は定まった。
<ジェーン視点>
フロドが錬金術で上級ポーションを生成した様子。
それを、よからぬ顔つきで観察していた者がいた。
衛兵、ジェーンである。
彼女はひそかに思った。
(あの錬金術……使えるわね)
上級ポーションを即時に錬成してみせたスキル。
かなり極まった技術だ。
(それにアイテムバッグにも、いろんなレアアイテムが入ってそう)
実際は、フロドが使っているのはアイテムバッグではなくアイテムボックスであったが……
誰もフロドがアイテムボックスなどという
普通にアイテムバッグを利用していると、ジェーンは認識していた。
(奪う価値はありそうね)
とジェーンは邪悪な笑みを浮かべた。
ひそかにつぶやく。
「まずはあの方に報告しなくちゃ……」
そして、彼女はしばし村をあとにするのだった。
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