第2章18話:ポーション錬成

中級ポーションを5つ。


上級魔石を1つ。


竜の血液が入った小瓶を1つ。


秘境の泉水が入った小瓶を1つ。


――――上級ポーションに必要な素材たちを、地面に並べる。


「な、何をするつもりなの?」


メリーユが困惑して聞いてくる。


俺は答えた。


「見ててくれ」


並べた素材に手をかざす。


それから唱えた。


「錬成!」


地面に並べた素材たちが光に包まれた。


一瞬ののち。


そこに、一つのポーションが出現していた。


……よし。


上級ポーション、完成だ。


「ど、どういうこと……いま一瞬で錬成を!?」


メリーユが混乱の色を浮かべる。


まあ瞬時に錬成なんて普通はできないからな。


【即時錬成】スキルは、やっぱりチートだよなぁ……。


ともあれ、あとは上級ポーションをガンドの傷口きずぐちらすだけだ。


俺は立ち上がり、ポーションのふたを開ける。


ネリーが制止しようとしてきた。


「ちょ、ちょっと、あなた何を……っ」


「大丈夫だ」


変なことをするつもりはないと意思表示いしひょうじをする。


ポーションをガンドにかけていく。


赤いポーションの液体が、ガンドにかかった瞬間、不思議な光の玉が彼の肉体を包む。


そうして、光が消えると。


ガンドがくぐもったうめごえをあげたのち、目を覚ました。


「……? ここは」


ガンドが上体じょうたいを起こす。


歓声が周囲に巻き起こった。


メリーユが呆然ぼうぜんとする。


「すごい……ほんとに、あの状態から回復させた? なんて質の高いポーションなの」


ネリーが身を乗り出して尋ねた。


「ガンド! 無事なのね!?」


「あ、ああ……確かオレは、ランドウルフにやられて……死んだかと思って」


とガンドは、怪我をしていた場所に手を当てる。


そして不思議そうな顔をした。


「痛みがない。傷が治ったのか……?」


「危険な状態だったけど、その人が治してくれたの!」


ネリーが俺のほうを向いて言った。


メリーユが口を挟む。


「まだ完治したとは限らないわ。まずは家に戻って、傷の点検てんけんをしてちょうだい」


ネリーが答えた。


「そ、そうだね。ガンド、いったん家に運ぶよ」


「いや、自分で歩けるさ」


ガンドが起き上がる。


ぴんぴんしている。


傷はほんとに治ったようだ。


まあでも、メリーユの言う通り、ちゃんと完治したのかチェックすべきだろう。


ガンドとネリーが去っていく。


そのときだった。


「あんた、すげーな!」


一人の男が声をかけてきた。


それを皮切かわきりに、次々と村人たちが言ってくる。


「あのポーション、一瞬で錬成してたわよね!?」


「あんな傷を治せるなんて、すげえ」


「錬金術の天才だな!」


「ガンドを救ってくれて、本当にありがとうな!」


俺はしどろもどろになってしまう。


囲まれて礼を言われるのは……やっぱり慣れないな。







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