第2章17話:治療

村の入り口であった。


小さな人だかりができている。


そして、ただよう血の匂い。


地面に倒れた一人の男が、重傷を負っていた。血が広がっている。


退いてちょうだい……!」


メリーユが人だかりの隙間すきまを通って、中心に向かう。


俺もその隣に立った。


メリーユが倒れた男性を見下ろして、目を見開く。


「これは……ひどい」


俺も同感だった。


倒れている男性が、重傷を負ったというガンドなのだろう。


状況がわからなかったが、周囲から声がこえてくる。


「いったい何があったんだ?」


「ほら、ネリーたちが街に食料を買いにいってたでしょ。その帰りにランドウルフに襲われたって」


「またランドウルフかよ! ちくしょう!」


なるほど……。


おおよその事情は把握できた。


「メリーユ!」


一人の女性がメリーユに声をかけてきた。


メリーユが言う。


「ネリー、あなたは無事だったのね」


ネリーと呼ばれた女性は、やや小柄な女性だった。


どことなくメリーユに顔立ちが似ている。


肩にかかるぐらいの赤髪。黄色い瞳。


肩を露出した服に、スカート。ブーツ。


腰にベルトを巻いて、服を絞っている。


狩人みたいな格好である。


「うん、なんとか。でもガンドがランドウルフにやられて……!」


とネリーが答えた。


「なるほど。すぐに治療を試みてみるわ」


メリーユがガンドに手をかざし、魔法をとなえた。


緑色の光があふれる。


これは……回復魔法か。


しかし。


「……ダメ。私じゃ、治せない」


メリーユが歯噛はがみするように言った。


どうやら回復魔法が通用するほど、傷は浅くないらしい。


「そんな……!」


ネリーが目を伏せた。


他の村人たちも、悔しさに打ちひしがれている。


これほどの重傷だとがないようだ。


相当そうとう重傷のようだな。中級ポーション……いや、上級ポーションなら治せるか……?)


と俺は推定する。


でも、上級ポーションか……


上級ポーションは、市販しはんではまず手に入らないレアアイテムだ。


ゆえに俺の手持てもちには存在しない。


だが、打つ手がないというわけではなかった。


なにしろ俺には、錬金術があるからだ。


素材さえあれば【即時錬成そくじれんせい】が可能である。


問題は、上級ポーションの素材を持ち合わせているかどうか。


(とりあえず【素材参照そざいさんしょう】をしてみよう)


俺は、上級ポーションのレシピを知るため……


スキル【素材参照】を使う。


すると。


ウィンドウが表示される。ちなみに、このウィンドウは俺にしか見えない。



◆◆◆


【上級ポーションの必要素材】

・中級ポーションx5

上級魔石じょうきゅうませきx1

・竜の血液x1

・秘境の泉水せんすいx1


◆◆◆



ふむ……


なかなか厳しそうな素材だ。


中級ポーションx5に関しては、アイテムボックスに入っていることは覚えている。


しかし他の素材はどうだったか……


俺はアイテムウィンドウを開く。


アイテムボックスに素材があるか探す。


……。


……うん。


ある。


上級魔石、竜の血液、秘境の泉水。


全て揃っている。


上級ポーションが錬成できるぞ!


さっそく、錬成をおこないたい。


俺は、メリーユに告げた。


「ちょっといいか」


「……フロドさん?」


「もしかしたらなんとかできるかもしれない」


「なんとかって……どうやって」


俺はその場に片膝かたひざをついた。


そしてアイテムボックスから、上級ポーションに必要な素材を取り出した。




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