第2章11話:村の問題と衛兵

村人の男性はため息をついたが、答えてくれた。


「旅人に話すことでもないんだがな……まあ、いいか。実は、食糧難しょくりょうなんおちいっているのさ」


「食糧難……」


男性はうなずいた。


「ああ。村では畑から取れた作物を食べる以外に、山で山菜さんさいなどを採取したり、川魚かわざかなを獲ったり、弱い魔物を倒して肉を得るのが常なんだが……最近、ランドウルフの群れが出たせいで、採取も狩猟もできなくなっているんだ」


ランドウルフ。


ここに来るまでに山ほど魔物を狩ってきたが……


それらしき魔物には何度か出くわした。


まあまあ強かった記憶がある。


男性は言った。


「街の冒険者ギルドに討伐依頼とうばついらいを出したんだが、人手不足ひとでぶそくってんで、なかなか受けてくれるやつもいなくてな」


男性はため息をつきながら、続ける。


「このままじゃ村が滅ぶってんで、村人が自力で討伐隊を出した。だが、それもかえちにって……うでぷしの立つやつがみんなやられ、いよいよが尽きかけてるってわけさ」


「なるほど……それは一大事いちだいじだな」


「あんたにとっちゃ他人事ひとごとだろうがな。はぁ……この村はどうなっちまうんだ」


男性は再度、盛大なため息をつきながら、去っていった。


俺は、男性の説明を、頭の中で整理する。


(つまり、ランドウルフの出没と、それを発端とする食糧難。二つの問題に悩まされているというわけか)


一応、他の村人にも話を聞いてみる。


だいたい同じような内容のことが聞けた。


俺は思った。


(これって、俺でも解決できる問題じゃないか?)


――――まず、食糧難について。


俺は、幸い、食糧はたくさん持っている。


さんざん森で魔物狩りをおこなったからな。


こんなに大量に肉があっても処分に困るので、いくらか村に寄付しても構わない。


――――で、元凶のランドウルフについて。


こいつも倒せば経験値を得られるし、新しい肉や素材も手に入る。


戦って、俺が損することはない。


(あまり難しいことはできないが……)


俺は底辺であり無能だ。


できることは限られる。


しかし、自分にできる範囲での人助けはしたいと思っている。


手の届く範囲で、誰かの助けになってやりたいと思うのだ。


(よし……)


そうと決まれば、まず食糧の提供からおこなおう。


でも、誰に提供すればいいのだろう?


村だから、村長とか探せばいいだろうか。



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