第9話 きょうだいたちと昼飯

~和希side~


「てをあわせてください!」

「いのちにかんしゃ、いただきますっ‼」

「「「「「「「頂きますっ!」」」」」」」


 琉亜と叶芽が小学生らしい挨拶をして、手を合わせる。

 可愛い。

 俺は一人っ子だから、こういう可愛い弟妹がいる森野家が羨ましい。


 小学生に手慣れているのは、隣の家が、親がそんなに帰ってこない小学生が3人いるお宅だからだ。


「う~ん、うめー!」

「珍しく味噌ラーメンだ」

「あっつい!」

「もー、るみおねえちゃん、ふーふーして!」

「はぁ~、沁みる~」

「はいはい、ふーふーするよー」

「…美味うまっ」


 それぞれが感想を言い合っている。叶芽と琉亜には、まだ熱かったようだ。


「るなおねえちゃんも、ふーふー!」


 琉海さんは琉亜のラーメンをふーふーしているから、叶芽はすぐ近くにいる琉菜に頼んだ。

 やはり可愛い。可愛い子がいると性格が変わってしまう。


「はーい、やるよー」


 その頼みに慣れたように琉菜がふーふーする。その姿も、ちゃんとお姉ちゃんらしくて少し笑いが漏れてしまった。


 話題のラーメンは、本当に美味い。味噌の感じが絶妙に効いていて、ラーメンも太さがちょうど良くて、モチモチしていて、具も食感が有って、味がすごく染みている。とてもインスタントの麺だとは思えない。名前を教えて欲しい。


「かずきにぃに! おいし~い?」


 と叶芽が聞いてくる。叶芽はまだ食べてないから分からない。


「めっちゃ美味しいぞ、ほら! 食べてみろ」


 琉菜がふーふーを終えたラーメンを、叶芽に向けている。


「いただきますっ!」


 ぱくっと麺を口に入れる。


「…うん、おいしい!! かずきにぃにのいうとおり!」


 あぁ、可愛い……。

 俺にもふーふーさせてくれ……。


 という俺の願いが通じ…るわけがなく、俺は黙々と麺を頬張る。

 叶芽にテレパシーの能力があったらヤバすぎる、デレデレになりそうになりそうになりそうになっていることがバレてしまう。テレパシーじゃなくてよかった。あれ? そういや……叶芽の能力……聞いてねぇ。


「かずきにぃに、ふーふーして!」

「ギャッ‼」


 この世のどこにもない声を出してしまった……。

 もしや叶芽、本当に……。


「るあは、たまをつくってうごかすのうりょくをもってるんだけど、かなめはねぇ、通信てれぱしーののうりょくをもってるんだよ!」


 と、遠くから琉亜がラーメンを頬張りながらにこにこ顔で言う。

 あぁ、終わった……。


「かずきにぃに、いのちにかんしゃしてふーふーして!」


 好奇心のこもった瞳で見つめられたら、断れるわけがないじゃないか。

 命に感謝してふーふーってのは、日本語としておかしい気もするけど。

 そんな指摘なんてどうでもいいくらい、叶芽が可愛かった。




「今日はありがとうございました。超美味かったです」


 数十分か経って、俺はさすがに森野家をおいとますることにした。


「いーや、こちらこそ! 叶芽と琉亜の面倒見てくれてありがとね!」

「僕はこーんなアクティブな弟妹たちに疲れさせられるんだよ…」

「どうだ! うちの弟たち、可愛かったろー、またいつでも遊びに来いよ、和希!」

「てゆーか叶多お兄ちゃん、これから毎日修行会場に行くんだから、和希は夜までいてくれていいんだよ~」


 と言ってくれる琉海さん、叶多さん、叶斗さん、琉菜。


「かずきにぃ! もういっちゃうのー?」

「あしたもぜったいきてね、かずにぃ!」


 よし、琉亜と叶芽からはいい人気っぷりだ。明日は5時に来て二人の寝顔を見に行くか…てか、ソレはウザすぎる。


「あぁ、絶対行くからな、楽しみにしてろよ!」

「ちょっとー、かずきにぃ? ねがおはみないでよー、はずかしいじゃん!」

「えーっ、かずにぃ、そんなことかんがえてたのー⁉ るあはべつにいいけどさ!」


 あ……この可愛児さいこうのこどもには、テレパシーという怖畏力サイテーな能力があるということを忘れてはいけなかった。


「えーっ、和希そんなこと考えてたんだ、キモー」


 ほら、琉菜にも悪口言われたじゃないか! どうしてくれるんだ叶芽!


「ほらほら、和希! 琉菜の言うことは気にするな! こいつは頭がイカれてるんだぞ、俺だって今でも0時から3時まで琉亜と叶芽と叶斗と琉海と琉菜の寝顔を見て、あぁ、俺の弟妹たち最高だなぁって幸せな気持ちで部屋に戻って熟睡して寝坊して起きたら11時になってるくらいだからな!!」


 げ……年の近い妹とか弟の寝顔まで見てるのか? ……怖すぎだろ。


「じゃあ大丈夫ですね! 助け舟ありがとうございます」


 とわざとにっこり笑顔を作って言う。


「……かぁぁぁあぁああぁずぅぅぅぅぅううぅうぅぅきぃぃぃぃいいぃいいいいいい!!!!!」


 と叶多さんが今にも追いかけてきそうな勢いで叫ぶので、「今日は本当にありがとうございました!」と早口で言って足に電流を走らせて走り始める。


「えーっ⁉ えぇっと、琉菜! 行け!」

「やっだねーっ! って、えぇぇぇ!!!」


 琉菜が言葉を発するにつれ、声がデカくなる。

 後ろを振り向くと…。


「ギャー‼‼」


 叶多さんの魔法によって浮かされて動かされた琉菜が、俺の鼻にぶつかり、その後叶多さんから1時間、説教を受けました。

 アーメン。

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