第6話 新人同士で初対決

 修行会場に着くと、そこには唯風さんと氷桜さんが待ち構えていた。


「ギリッギリだったね、二人とも! あとの二人もそろそろ来るはずなんだけど…」


 と唯風さんが話していると、後ろからまた二人来た。

 確か、昨日測定前に新人として入ってきた人たちだった気がする…。

 男子の方はやんちゃそうだけど元気そうな人で、女子の方は少し大人しめだけど瞳の奥に強い意志が込められてそうな人だ。


「よし、よく来た! じゃあ、今日のことについて話そっか!」


 唯風さんが四人全員に言って、小さな闘技場のようなところに向かった。




「まずは自己紹介から行こうか。そっちの二人から!」


 と俺たちが指で指され、慌てて口を開く。


「白石和希です。魔法は…」


 これって、専門用語じゃないほうが分かりやすいか。


「電気を操るものです。高校1年生15歳です」

「森野琉菜です! 魔法は周りの魔法を吸収して、出すものです。同じく高1の15歳です!」


 琉菜の魔法を聞いた時、二人とも目を見開いていた。

 最強じゃないか、と思ったのか?


「あ…小澤おざわ火宇雅ひゅうがです! 魔法は、火を操るものです! 同じく高1の15歳です」

石島いしじま 波音はのんです。魔法は、音を発せられるものです。高1の15歳です」

「じゃあ全員のことは名前で呼ぼうか! これからいっぱい関わるからね」


 関わる。戦うってことか…?


「じゃあ…和希! よろしくな!」


 と小澤…いや、火宇雅の方から手を差し伸べてくる。


「あ…ああ。よろしくな、火宇雅」


 女子陣では、同じように琉菜が、


「よろしくね、波音!」

「こちらこそよろしくお願いします、琉菜」


 と円満な握手をしている。

 琉菜と火宇雅は気さくなほうだから普通に握手してるけど、波音はそんなに異性と関わりたくなさそうな感じがするから、琉菜たちの握手のその下からお辞儀をした。




「じゃあ、とりあえず戦ってもらおうか。怪我しても治療効果を持ってる人がいるから、その人に治療してもらえれば元通り! だから、気を置かずに思う存分やっちゃって! いくよ~!」

「「「「はいっ!!」」」」

「よ~~~~い、スタート!!」




 唯風さんの掛け声を合図に、戦闘が始まった。


火玉ファイア・ボール!!」


 先制攻撃をしてくるのは火宇雅だ。

 火の玉が飛んでくる。

 俺が電気の膜を張って防ごうとしたけど、その前に琉菜が吸収してくれる。


吸収サクション‼」


 その間に…!


速電ファスト・エレクトリシティ‼」


 目にもとまらぬ速さで電流を走らせる。

 それは火宇雅に直撃した。

 感電してビリビリになっている火宇雅…ではなく波音に向けて、先ほどの先制攻撃の火玉ファイア・ボールを琉菜が放つ。


火玉ファイア・ボール‼」

「んっ…音防トレブル・ディフェンス‼」


 攻撃しか吸収できない琉菜は、戸惑っている。

 でも、防御魔法の場合は、ずっとそっちに集中していないと結界が破壊されてしまうため、他の攻撃は出せない。

 なら!


強電ストロング・カーレント‼」


 俺が波音に電流を送れば勝ち、と思った。

 でも。


「あぁぁっ‼ 火破ファイア・ブレイク‼ の、火雨ファイア・レイン‼ で、炎盾フレーム・シールド‼」


 と火宇雅が3連続の魔法をやった。

 睡魔に一瞬襲われたのか、火宇雅が一度地面に倒れこむ。

 俺が当てた電流を破壊し、俺に向かって火の雨が降らせ、炎の盾は琉菜へ近づく。


吸収サクション‼」


 そうだ、琉菜は吸収と放出、同時にできるんだったっけ。

 自分に向かっている魔法だって気づいているはずなのに、俺の方の魔法を吸収してくれる。

 ありがとな、琉菜。

 火の雨は琉菜に吸い込まれる。

 代わりに、俺が!


電盾エレクトリシティ・シールド‼」


 これで炎の盾を火宇雅の方に押す。

 向こうでは琉菜の放出した火の玉が勝って、波音に向かっている。

 でも、その波音は、


音跳サウンド・バウンス‼」


 琉菜の魔法を返した。

 そんなことまで、波音はできるのか?

 琉菜はその魔法を見て、先ほど吸収した火の雨で対抗する。


火雨ファイア・レイン‼」


 これの威力は相当だったらしく、跳ね返しとの対決はすぐに火の雨が勝って、波音に降り注いだ。

 

「波音‼」


 と火宇雅が叫ぶ。

 俺と琉菜は目配せした。


「えっと…どうしよう、」


 火宇雅が考えている。

 それもそうだ、今波音が被害を浴びているのは炎だから、それに炎で対抗したって意味がない。

 こうやって、動揺している間にっ‼


「うおおおっ‼」


 さきほどの電盾エレクトリシティ・シールドで押していた炎盾フレーム・シールドを力を込めて押す。


小電スモール・カーレント


 気づいた俺は、小声で小電スモール・カーレントを琉菜に送る。

 強い電流にしてしまうと、逆に今波音の周りを纏っている火を破壊してしまうからだ。

 その魔法を吸収サクションした琉菜が、そのまま波音に、


小電スモール・カーレント‼」


 と送る。

 やはり、火宇雅はこれに気を取られてしまった。

 今だ。


「あぁぁぁぁっ‼‼」


 あとで何時間でも寝ていいので、今だけは、戦いを終わらせてください…。

 俺が押した火宇雅の魔法は、火宇雅に直撃して、火宇雅の身体は火と電気に包まれた。

 それを見た瞬間、もう耐え切れなくて、気を失ってしまった――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る