第5話 眠気と奮闘、朝6時

~和希side~


 さきほどの部屋に戻ると、唯風さんに「今日はもう帰っていいよ、明日朝6時に集合ね」と言われたから、特殊な扉から琉菜の家に戻る。その頃には琉菜も起きていた。

 ちなみに、こっちに来るとき鏡から出てくるのは新人かどうかを判別するためらしく、扉は通ってる人達が出入りするところらしい。この扉から戻るとさっきと同じように琉菜の部屋の鏡を通り抜けたことになる。


「てか、朝6時って早くね?」

「何言ってんの! うちのお母さん、全盛期は3時集合とかだったんだから!」

「さっ…」


 3時っ⁉

 それ、俺が超熟睡してエネルギー取り戻してる時間…。


「そのためにも、今日は和希も早く家に戻って休まないと! もう夜だし」

「ホントだ」


 部屋の時計を見ると、いつの間にか19時を回っていた。そんなにやってたか?


「あっちの修行会場では、現代と違って時空が歪んでるから、時間の進み方も予測ができないんだってさ」


 予測ができない? え? じゃあ、戻ってきたら1分も進んでない時もあれば何日も進んでるってこともありうるってことか?

 だから、うちの学校の魔類マジカルのクラスは不定期に休む人が多いのか…。


「へー…じゃー俺、明日5時55分くらいに来ればいいの?」

「そうだね、朝ご飯はあっちで食べさせてもらえるようにお母さんがやっておくって言ってたから大丈夫! 持ち物は要らないよ」

「分かった。じゃ、また明日」

「うん、明日ね」


 いかにもバディっぽい会話を交わして、俺は家を出た。




 チリリリリ、チリリリリ…

 アラームが鳴って、目を閉じたまま止める。


「あぁ…修行、か」


 5時20分。

 寝起きは良くも悪くもない。アラームが鳴ったらすぐに行動は始めるけど、数時間はあくびが止まらない感じだ。

 今日も、ふぁぁっとあくびをしながらそろーりそろーりと部屋を出る。


いてっ」


 階段の角に腰をぶつけてしまった。寝起きってのは危ない。

 キッチンへ降りて、とりあえず水だけ飲んで、外に行けるような服を着て、髪の毛も適当に濡らして整える。


「ねむ…」


 と少し文句をたれながらも、家を出た。

 両親は、俺が魔類マジカルだということも知ってるし、母も父も魔類マジカルだったから、いつかこうなるのは分かっているだろう。

 寝起きだから絶対に忘れると思って、昨日のうちにリビングの上に置手紙は置いておいた。

 学校に行くときはいつも6時30分起きだから、1時間以上も早く起きると、いつもより眠くなってしまう。

 琉菜の家までの経路は交換した連絡先から送られてきている。ここからだと20分くらいかかるらしい。

 夏だから、もう1時間前くらいには日の出していて、すでに暑い。そろそろ27℃は行くと思われる。

 空気もぬるっとしているせいで、余計に睡魔に襲われる。

 携帯電話スマホを凝視しながら、なんとかたどり着いた。

 うちと同じような、一軒家だ。

 ピーンポーン

 インターホンを押すと、すぐに琉菜が出てきた。


「ごめん、色々準備が終わってなくて…」


 確かにいつもより髪の毛がセットされていない。


「あと4分だけど…3分だけ待ってて!」


 1分残しで行くのかよ。何時に起きたんだ、琉菜は?

 壁に寄りかかって、立ったまま体力補給をする。


「ふわぁぁ…」


 現実と夢との狭間にいると、ガチャッとドアが開いた。


「和希…って、寝てる⁉」

「んぁっ? いや、起きてるよ」

「いや、絶対今の反応、半分寝てたって…」


 ふん、俺はいつでもどこでも眠れる男だからな!


「よし、行こう!」


 いつもより気合いを入れて、長い髪をポニーテールにしている琉菜。

 学校では降ろしているから、少し新鮮だ。


「和希、急いで! 15秒!」


 急いで、と言われても、未だに眠いし、遅くしたのは琉菜だろ…。

 そんな文句を心の中で言いながらも、小走りで鏡の前へ向かった。

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