第1章 魔法業界へレッツゴー!

第3話 修行の終業式

~和希side~

 次の日は終業式だった。

 ほとんどは恒例の校長先生の長話だった。中学校より長かった気がする。

 終業式が終わって、教室でのびのびとしていたら、


「和希!」


 と琉菜が来た。

 昨日、あの後話して、めんどくさいから名前で呼ぼう、ということになった。

 どっちもフレンドリーなほうでよかった。


「何?」

「行くよ!」

「どこに?」


 主語が無くて困る。


「修行だよ、修行! 第1回!」




「どこ、ここ?」


 何故か琉菜の家に連れていかれて、琉菜の部屋に入れられて、縦長の鏡の前に立たされた。

 ここに来るまで、すごい量の部屋があったけど。

 俺がどこ? って言ったのは、鏡の奥には自分の姿ではなく、どっかの五つ星ホテルのロビーみたいな感じの景色が写っていたからだ。


「この中に入ると、修行会場に行けるよ!」

「しゅ、修行会場?」

「これから私たちは、この中に入って、二人の単独魔法の練習とか、連携攻撃の練習をしに行くの!」

「ずいぶんと詳しいんだな」

「へへ、お母さんが言ってた」


 なんだよ、見直したと思ったのに。


「じゃ、行くよ!」

「…おう?」


 こうして、俺らは鏡の先へ飛び込んだ。




「わっ」

「うおっ」


 中に入ると、一段だけ地面が下がっていたため、転びそうになったけど、二人とも何とか踏みとどまった。


「おっ、久々の新人入ってきたよ!」

「マジかー、ま、チョロいんだろうけどさ」


 はぁ⁉

 部屋の奥の方に二人、20代後半くらいの大人がいて、その人たちが発した言葉に俺も琉菜も耳を疑う。


「まーまー、そう冷たい事を言わないでよ、氷桜」

「だって、毎回本当にチョロいじゃないか。まぁ、やってみないと分かんないけどな、唯風みたいに」


 …ムカつくけど、聞こえないふりをする。


「氷桜って、なんか変なとこで素直になるよね」

「素直じゃねぇ、お世辞だよ」

「ひっど! 普段はお世辞さえも言わないくせに!」

「はいはい、お前は対応行ってやれ」

「はぁい」


 仲睦まじいやり取りのあと、男性の方は部屋を出て行ってしまった。


「ごめんねぇ、愛想悪くて。氷桜、本当はあんな人じゃないんだよ~」

「は、はぁ…」


 まずは、俺たちの自己紹介をさせてくれ…。


「あ、そっか、自己紹介が先だった。じゃあ、君から! 自己紹介っ! 名前と、魔法と、年齢!」


 思い出したように女性が言う。


「…白石和希です。魔法は…放電ディスチャージです。15歳です」

「森野琉菜です! 魔法は、吸出ソック・プットアウトですっ!同じく15歳です!」

「放電と吸出か! どっちもいい魔法じゃん!」


 フレンドリーなのか、女性は二人の肩を掴んで目を輝かせて言ってくる。


「私は綾瀬あやせ 唯風ゆいか! 名前の通り、風を操る魔法、吹風ウィンド・ブローウィング! 28歳だよっ☆ よろし…」

「唯風! 今すぐその二人をどかせ!」


 さっきの男性がもう一度入って来て、急に叫んだ!


「えぇっ」


 と叫びながらも、唯風さんの持ち前の反射神経(なのか?)で俺たち二人を軽々と掴んで避ける。

 すると、鏡からもう二人、男女が入ってきた。


「うわぁっ」


 無事にその二人が地面に着地したのを見て、男性が、


「はぁ…よかった。その二人が踏まれるとこだったよ」


 と安堵の表情。


「ありがと、氷桜! 氷桜は勘が鋭いんだよねー。じゃあ私は自己紹介したから、あっちに行く。氷桜やっといて!」


「は? 俺? 子供の世話は私がやるって半年前、張り切ってたくせに…」


とぐちぐち言いながらも、こっちの方にやって来てくれる男性。


「…俺は結城ゆうき 氷桜ひお。唯風と同じく、28歳だ。捉凍グラスプ・フリーズ対象のものを凍らせることができる。よろしく」

「「よろしくお願いします!」」

「白石和希です。放電ディスチャージで、15歳です」

「森野琉菜です! 吸出ソック・プットアウトで、同じく15歳です!」

「和希、琉菜、よろしくな。じゃあ、まず魔法測定に行こうか。測定室に行って、魔力を測らせてもらうよ」

「は、はい」

「はーい!」


 相変わらず琉菜は元気だけど、こちらとしては良くわからない。

 さっきは俺たちのこと否定的だった氷桜さんだけど、今は協力的になってくれてい

る。

 そっちの方が楽だから助かるけど、豹変して怖い。

 そんなこんなで、俺たちは測定室へ向かった。

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