8章 抵抗

光の檻の中にライの姿はなかった。


あるのは空っぽの光の檻


フラフィは初めて知った。自分が何でなぜこうなってしまったのか。


ずっと感じていたはフラフィの知らない所で起きていた一連の出来事の収斂しゅうれんの結果だった。



「フラフィ。君も災難だったね。でもってそういうものだから。理不尽だから。不運って言葉があるくらい何事も上手く行かない、自分の思い通りにいかない。から。それが運命だから。それに対してどう対処するかなんてないんだよ。すべての存在は運命に支配されてる。そういうこと」



アインは窘めるように話す。しかしその言葉はフラフィにとって納得出来るようなものではなかった。ライは確かに不思議で不気味なところがたくさんあった。友達と呼べるのかも怪しいところだった。

でも確かなのは少しだけってこと。



フラフィは立ち上がりアインの方を向いてアインを睨みつける。


「ねぇ、アイン。僕は今そして君は使



「なにか気に入らないの?そう。君は悪魔だったね。死がこの世から消える事がそんなに納得できないかな?おかしな事かな?心配しなくても大丈夫だよ。世界はそう変わらない。なぜならこの私、アインが死をも司る運命の支配者として生死の命運すら私が行う。そう、つまり正式な運命の終わり、その初めての存在こそが彼だった。ということ。それが運命だから」



「違うよ」



「なにが?」




「運命は君が決めるのかもしれない。君は天使だし、運命の支配者だから」



「その通り」



「でも、僕はその運命にことも出来るようになりたい。僕の友達、ライがそう言ってたから」




「ライ。ライね。フラフィ、君はさっきの話を聞いてなかったのかな?彼はLIAR嘘つきだよ。嘘つきの言葉を」


「嘘でもいいよ。嘘だとしても僕は黒猫で有ろうとしてたライを信じたい。そして彼が死神を諦めて黒猫になりたいって、運命に抗うなら僕もそうする。僕はライを信じる。彼が死神でもなく黒猫でもないなら僕にとって彼はだから」


「嘘を信じる?友達だから?なにそれ笑えない。君まるでにでもなったかのような事を言ってるよ?」


「いや違うよ。君はずっと僕を何かと間違えてるね。使



「何をバカなことを言い出すかと思ったら。君はわかってないみたいだけど私は運命の天使、支配者だよ?私がすべての存在を支配してるの例外なく君もその一人なんだよ」



「そんなの知ってるよ。ライの言葉を借りるなら



アインの翼がまた1つ、そしてもう1つ消える。

そしてフラフィの角が大きく伸びる。



「なんの真似?まさかこの私に抗うっての本気なの?それなら仕方ないね。彼とを辿らせてあげるよ」


アインが杖をフラフィに向けてかざす。

それに対してフラフィは臆することなく不敵な笑みを浮かべた。


「それ本当?使僕の尊敬する黒猫ライと同じ運命?光栄だよ。僕は死神のくれた悪魔という運命を少し気に入ってきたよ。天使の僕ならできなかった事を。今の僕なら悪魔の僕なら出来そうだから」



フラフィの手足が伸び、角は更に大きくなった。

異形の存在へと変貌するフラフィ

その姿を形容するならば万人が言うだろう

だと



「感謝してるよアイン。君がくれた。そしてライにも感謝してる。こんな姿じゃないとがある」



フラフィが手をかざすと現れたのは大きな三日月の付いた大鎌

まるで刃先はライの不気味な笑顔によく似た三日月の形をしていた。



「フラフィ、君は悪魔だろ?それはデスサイズ。だよ。君に扱えるのかな?私を倒して運命を変えるって?ヒーローにでもなったの?ライを救うって?笑い話にもオチは必要なんだよ?」



「関係ないよ。僕は使だから」



「そう。じゃあ君も必要ないね」



そう言うとアインは光の帯を引きながら杖を振りかざし、フラフィへと一直線に飛来した。フラフィはそれをふわりと体を翻して交わすとデスサイズを振り下ろす。


青い稲妻がアインを貫く。


アインの翼が黒い光でボロボロと崩れだした。

やがてその黒い光はアインの背中を伝って全身へと広がっていく。


アインは杖を手から落として呟く


「どうして?どうして君は運命に囚われないの?姿辿すべての存在がそうであるならば争いも不幸にもならないのに。どうして変化を望んだの?」



フラフィは答えた。




「友達、いや、僕がそれを望んだから」



黒い光はやがてアインを飲み込み青白い閃光を放った。

光は白い部屋すべてを包み込み、館は光に包まれて消え去った。



フラフィは暗い森の中に倒れ込んでいた。

そしてフラフィはある事に気が付いた。


ヤギの体は消えて赤色だった肌白色に。

生えていた小さな牙も消えて、フラフィは人間の子供の姿に変わっていた。



「あれ、僕どうしちゃったのかな」


フラフィとともに落ちていたデスサイズが緑色の炎をあげて猫の形になると見覚えのある黒猫の姿がそこにあった。



「やぁ。フラフィ」


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