3章 ここじゃみんなそう

フラフィとライはまた再び

月明かりに照らされた長い廊下を歩いていた。

フラフィは先程の出来事を考えていたが答えなんて出なかった。

魔界にいた時もあんな不思議な事なんて起きたことない。

ふとライの後ろ姿を眺める。



「ねぇライ」


「なんだい?」


「さっきの裁判の時、僕を弁護してくれたよね。そのお礼をまだしてなかった。と思って、ありがとう」


「そんな事をしばらく考えて居たのかい?あんたは暇なんだね」


「でも僕少し思った事があるんだけど聞いてくれる?」


「ああ、良いとも。暇だからね」


「さっきのナイフさん、どうしてあんな目にあったの?」


「そりゃナイフはトマトをスライスしたからさ」


「でもナイフはその為にあるんじゃないの?彼はある為に彼らしい事をしていたんだと思うんだ。それなのになぜあんな事になったの?」


ライは立ち止まる。

そして振り向くとニヤニヤとしながら答えた。


「ナイフらしくか。ふふ、それじゃあ聞くがあんたはあんたらしく悪魔らしくあるのかい?」


フラフィは少し考えたあとに答えた。

「僕は悪魔らしく…無いかも…ぼくは悪魔だけど、悪い事をしようと思わないし、それよりもみんなには楽しくて嬉しい気持ちになってほしいって考えてしまうんだ。だから魔界からも追放されてしまった」


「ハハハ、悪魔なのにね。じゃあ質問を変えてみよう。事は間違いだと思う?」


「それってどういうこと?」


「悪魔が悪魔らしくあるとするならば、悪業をして不幸をもたらすべきだと思わないか?でも、君はこれまで不幸をもたらす事をしなかった。だから追放された訳だろう?さて、それは悪い事かな?」



フラフィは頭を抱えた。


「うーん、難しくてよくわからないよ。悪魔が悪魔らしくある為には悪業をする。それはかも知れないけど事は良くないことだと思う。だからどっちが正しくてどっちが間違ってるかなんて僕にはわからないよ」


「そう。正解なんてないんだよ。なんてのはいつもそうだ。ある人から見たら正しく、ある人から見たら正しくない。常に一定ではないんだよ。その上でみんな生きているのだから」


フラフィは困り顔をしながら答えた。


「僕には難しくてわからないけど、でも君が僕を助けてくれたって事はわかる。それは嬉しかった。だからお礼をしたんだ」


「あんたのそういう所。好きだよ。ハハハ」


ライは皮肉を言うとニヤニヤとしながら振り返り再び扉の前で立ち止まった。


「次はこの部屋のようだ」


って?ライは何処かに行こうとしてるの?」


ライはニヤニヤしながら答える

「あんたはどこへ行こうとしてるんだい?」


「どこへ行きたいのか僕もまだわからなくて。ここへ来たのもゆっくりと眠ろうと思っていたからなんだ。目が覚めてしまったけど」


「へぇ。じゃあどんな所で眠りたいんだい?」


「どこだって構わないけど」


「じゃあどこへ行こうと同じ事だね。けどあんたは知りたいんだろうねぇ。


「なにが?」


「『眠り』さ」


「ねむり?」


「あんたはさっき目が覚めたと言っただろう?あれは『眠り』が裁判で騒がして逃げたからさ」


「そうなの?じゃあ僕の眠りはここにきたの?」


「ああそうさ。俺は猫だからね。鼻が効くのさ」


フラフィは扉に手を伸ばす。ドアノブに手をかけたがすぐにその手を離した。



「おや?開けないのかい?」


フラフィは少し扉から下がると深呼吸をした。

さっきように恐ろしい事になるかもしれないからだ。

そしてライに尋ねる。



「僕もう怖い目に合うのは嫌だよ」


「怖い?怖い事なんてあったかい?」


「言うと失礼かもしれないけど、さっき会った食材達はみんな変な人達だったから」


「変な人達?それってって事かい?」


「言い方は悪いけどそうだね。僕もうそういう人達には会いたくないよ」


ライはニヤニヤとしながら答えた。


「そんなこと言ったって無理な話だね。ここじゃみんなイカれてるからね。ハハハハハ」


ライは笑いながら更に続けた。


「もうあんたも気が付いてるだろう?もちろん、この俺も


そう言うとライは扉に飛び付いて扉を押し開けた。

フラフィはライが飛び跳ねた途端にライを捕まえようとしたけど間に合わなかった。


扉は開いてしまった。


その刹那、強い光がフラフィとライを包み込む。


フラフィはライの身体を掴みながら光に目を閉じる。


しばらく目を閉じていたが腕の中でライが動くのを感じる。


ゆっくりと目を開けたフラフィは小さなお店のような所にいた。

古臭い木の棚にはカラフルなビンに詰まった薬品や不思議な粉が入ったビンが並ぶ。小さな戸棚には見たことない文字が書かれていて半開きの戸棚からは何かの葉やキノコのようなものが見える。



どうやらここは薬屋さんのようだ。


「おい、いつまで掴んでいる」


ライがフラフィから飛び降りる。

ライはやれやれと言った様子で身体を舐めている。

フラフィは辺りを見回す。


「ここは、お店?薬のお店かな?」


「お、なんだ!?お客さんか!?ようこそ!いらっしゃい!」


威勢の良い声が聞こえる。しかし聞こえた場所は天井からだった。

フラフィが天井を見上げるとそこに居たのは4mを有に越える長い8本足を持つ眼鏡を掛けただった。


フラフィは驚き、首を竦める

「わあ!びっくりした!」


「ああ!すんませんねぇ。まさかお客さんが来るとは思ってなかったもんでね!すまんけど、もうちっと前へ移動してくれませんかな?」


フラフィは見上げながら少し前えと移動する。

フラフィの背後に長い足が2本ストンと降りてくる。


「ふぅ。これで落ち着きました。ありがとう!そんで、お客さん!そこの毛玉はお客さんのお友達ですな?うちは一応動物禁止なんやけど、せっかくのお客さんだからよ、今日は特別に良しとしときますわ!」


「あ、あのここはなんですか?」


「ここは何ですかってお客さん、てやんでぇべらぼうめ!んなこと言っちゃあいけませんよ!ここは『何でもないお店』に決まってるでしょうに!」

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