第5話 DV配偶者暴力相談支援センター

 涼子の住むY市にもDV《ドメスティックバイオレンス》被害者のための相談窓口がある。


『男女共同参画局』


 だんじょきょうどうさんかくきょく


 内閣府にあるらしい。


 涼子は前々からスマホで検索していた。


『DV』『相談』


 そこで涼子の住むY市に相談窓口があることを知った。


 パンフレットには、『男女共同参画局』って文字。

『女性に対するあらゆる暴力の根絶』を掲げている。


 実は、各都道府県、市町村に、ドメスティック・バイオレンス(DV)、性犯罪・性暴力の被害者のための支援拠点が設置されていることを知る人は少ない。


『家庭内』、『密室』


 特に配偶者からの暴力(DV)被害者は、その問題の性質上、支援機関の存在が公にされないためだ。


 実際には、市町村における配偶者暴力相談支援センターの数は全国で120か所以上ある。


 涼子も過去に相談へ行ったことがある。

 もちろん1度ではない。


 相談員の方から、

『この状況は、娘の眼の前でやっており、面前DVです。子どもさんへの虐待ぎゃくたい行為ですよ』

『とても看過かんかすることはできない』

 と言われた。


 マサオが娘に直接手を上げたりしてなくとも、目の前で母親が殴られそうになったり、「殺す」「殴る」と言われることは「面前DV」というのだそうだ。


 明らかに娘への虐待行為になり、子どもの心の健康や、成長をいちじるしく阻害そがいするということだった。


 どんなことがあったとしても、絶対にやってはいけないコトなのだ。


 そして、DVを行う加害者の行為はだんだんエスカレートしていくそうだ。

 DV加害者は、しばらくは優しくなるが、数年たって突然また暴力は起こる。

「治ることはまずないと思っていてください」と言われた。


「娘の父親だから、やっぱりどこかで悪く言いたくなかった。でも女性を大切にできない、人をリスペクトできない、カスでクズ野郎でした」


 涼子がこんなふうにハッキリと声に出して言ったのは、今日が初めてだ。


(私は悪くない。やっと気づいた。)


 涼子の場合、16年間かかった。


 でもまだ遅くない。


 自分の人生を取り戻さないと。

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